(旧版)高血圧治療ガイドライン2009
第3章 治療の基本方針
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- 治療の目的は高血圧による心血管病の発症,進展,再発を抑制して死亡を減少させ,高血圧患者が充実した日常生活を送れるように支援することである。
- 治療の対象はすべての高血圧患者(血圧140/90mmHg以上)であり,糖尿病や慢性腎臓病(CKD),心筋梗塞後患者では130/80mmHg以上が治療の対象となる。降圧目標は若年者・中年者では130/85mmHg未満とする。糖尿病やCKD,心筋梗塞後患者では130/80mmHg未満とし,脳血管障害患者,高齢者では140/90mmHg未満とする。
- 降圧治療は生活習慣の修正(第1段階)と降圧薬治療(第2段階)により行われる。生活習慣の修正は,食塩摂取量の制限,減量,運動療法,アルコール摂取量の制限,果物や野菜の摂取の促進,飽和脂肪酸や総脂肪量摂取の制限,禁煙などであるが,高血圧の予防のためには,すべての国民が生活習慣の修正を心がけるべきである。降圧薬治療開始時期は個々の患者の血圧レベル,心血管病に対する危険因子の有無,高血圧に基づく臓器障害の有無ならびに心血管病の有無から決定する。
- 降圧薬の使用上の原則は,1日1回投与の薬物で,低用量から開始する。増量時には1日2回の投与法も考慮する。副作用の発現を抑え,降圧効果を増強するためには適切な降圧薬の組み合わせ(併用療法)がよい。II度以上の高血圧では初期から併用療法を考慮する。
- 家庭血圧の測定は,白衣高血圧や仮面高血圧の診断のみならず,高血圧治療の効果判定に有用である。家庭血圧の測定は,患者のコンコーダンス(アドヒアランス)を良好に保つうえでも重要である。白衣高血圧患者は治療しない場合も定期的(3-6か月ごと)に経過を観察する。
- 高血圧患者のQOLには,高血圧そのものによる身体的,精神的な問題と降圧薬による影響(副作用など),医師(医療機関)-患者関係などが影響する。
- 十分なコミュニケーション,情報提供,QOL・副作用への配慮に加え,服薬錠数,服薬回数を少なくすることは,アドヒアランスの改善,血圧コントロールの改善に有用である。
- 治療に際しては疫学や臨床試験の成績,患者の臨床的背景,降圧薬の薬理作用,薬剤コストに加え,高血圧生涯治療の費用対効果などを包括的に考慮し,担当医が最終的に決定する。