(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第11章 二次性高血圧 |
6)薬剤誘発性高血圧
e エリスロポエチン
慢性腎不全ではエリスロポエチンにより貧血は改善するが、同時に急激な高血圧発症や増悪(高血圧性脳症)をきたすことがある。エリスロポエチンによる血圧上昇反応は、ヘマトクリット値の上昇とともに循環血液量が増加し、血液粘稠度を高め血圧上昇をきたす。すなわち、腎性貧血では長期間、ヘマトクリット値が低く、これに適応していた状態から急激にヘマトクリット値が上昇した結果、血圧上昇をきたすと推測される。
エリスロポエチン治療中には20〜30%の頻度で高血圧発症あるいは悪化がみられ、本邦の市販後調査でも29%に血圧上昇がみられた504)。エリスロポエチンによる透析患者の血圧上昇反応は透析前の慢性腎不全患者より大きく505)、透析前には高血圧をきたさないとする報告もある506)。透析患者における血圧上昇反応は高血圧家族歴がある場合、大きく、遺伝的素因の関与が示唆されている507)。
エリスロポエチン使用時(中止後も)には、ヘマトクリット値の推移に注意する。血圧管理不良で高血圧性脳症や脳出血に至ることもある。血圧上昇の対策として透析時の除水量の調節、降圧薬の追加・増量、エリスロポエチン減量を行う。エリスロポエチン中断または/同時に瀉血により赤血球数を低下させ、血圧上昇反応を抑制することもある。