(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第11章 二次性高血圧 |
6)薬剤誘発性高血圧
a 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
NSAIDsは、アラキドン酸からプロスタグランジンが産生される過程でシクロオキシゲナーゼを阻害し腎プロスタグランジン産生を抑制し、水・Na貯留と血管拡張の抑制をきたす。高齢者や腎機能障害患者では、代償機構として腎プロスタグランジンが腎機能を保持し、血圧上昇の抑制に関与する。一方、NSAIDsを用いればプロスタグランジン産生が抑制され、腎機能を低下させ、結果的に血圧上昇をきたしやすい。実際、NSAIDsの血圧に及ぼす影響を検討した報告を検討すると、平均血圧5mmHg程度の上昇をきたすとされている491)。高血圧の既往のない高齢者正常血圧患者がNSAIDs服用開始後に著しい血圧上昇を認め(高血圧状態まで)、中断により血圧は正常化したと報告されている492)。高齢者ではNSAIDsは急性腎機能障害をきたしやすく、腎機能障害が血圧上昇をさらに促進し、また、利尿薬・NSAIDs併用例では利尿薬単独服用例と比較すると心不全の危険性を上昇させる493)。したがって、高齢者高血圧において、NSAIDsを用いる場合、少量を一定期間用いてきめ細かい観察と腎機能のチェックを行う。シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)選択的阻害薬の血圧および腎機能に及ぼす効果は非選択性NSAIDsと同様とされているので494)、注意が必要である。
薬物相互作用については、利尿薬は腎尿細管でNaClの再吸収を抑制し、同時にプロスタサイクリン産生を刺激する。フロセミドのようなループ利尿薬の作用も部分的にはプロスタグランジン依存性である。このため、NSAIDsと利尿薬併用では、利尿薬の降圧効果を減少させる。ACE阻害薬、β遮断薬との併用も降圧効果を減少させる。アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)との併用で降圧効果を抑制するとされる一方、影響しないとの報告もある。Ca拮抗薬との併用では降圧効果への影響は少ないとされる。