(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
第11章 二次性高血圧


3)内分泌性高血圧

c 褐色細胞腫

本症はカテコラミン産生腫瘍によるもので、10%腫瘍(両側副腎性、悪性、副腎外性のものがほぼ10%を占める)といわれる。高血圧の病型から持続型と発作型に分けられる。動揺性の大きい高血圧以外の自他覚症状としては、動悸、発汗過多、めまい、嘔気、嘔吐、頭痛、高血糖、体重減少、振戦などが、また、持続型では起立性低血圧など多彩な自律神経症状がみられる。
本症が疑われた場合には専門医に紹介すべきである。本症の根治療法は腫瘍の外科的摘出で、正確な腫瘍の局在診断(131I-MIBGシンチグラフィーが有用:部位、数、転移巣の有無)の後に行う。開腹術と腹腔鏡下手術があるが、腫瘍への物理的刺激により著明な高血圧発作が惹起されることなどから前者が一般的であり、後者の適応は慎重に検討すべきである470)。血圧のコントロール、循環血漿量の減少を是正した後に腫瘍を摘除するのが原則である。
薬物療法は術前治療として、また手術が不可能な例に対症療法として行われる。α遮断薬とβ遮断薬を用いてカテコラミン過剰による病態を是正する。主としてα遮断薬により血圧の安定化を図る。数少ない前向き研究によると、長時間作用型α遮断薬であるドキサゾシンの有効性は、全体で79.2%、単独で66.7%、β遮断薬との併用で91.7%とされる471,472)。β遮断薬の単独投与は、α受容体刺激作用が優位となり血圧上昇を招くので禁忌である。α遮断薬は常用量より大量投与が必要となるが、起立性低血圧にも留意しつつ、少量より漸増する。降圧が不十分な場合にはCa拮抗薬やACE阻害薬を加える473)
術中、術後は十分な補液が重要であり、また血圧、脈拍、血糖を頻回にモニターする。手術侵襲などによる高血圧クリーゼにはα遮断薬(フェントラミン)、β遮断薬、あるいはCa拮抗薬の静注を行う。術後の急激な血圧低下にはノルアドレナリン投与が必要となる。
手術時に良性と判定された本症114例の17〜194カ月のフォローアップ中に16例(14%)に良性または悪性の本症の再発をみたとの報告474)があり、術後も注意深い経過観察が必要である。転移巣を伴う悪性褐色細胞腫では化学療法(シクロホスファミド、ビンクリスチン、ダカルバジンの併用)475)131I-MIBG内部照射を行い、副腎皮質ステロイド合成阻害薬を投与するが、効果は期待しがたい。
 
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