(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
第11章 二次性高血圧


3)内分泌性高血圧

b クッシング症候群

糖質コルチコイド過剰による満月様顔貌、中心性肥満、伸展性皮膚線条などの、いわゆる“クッシング徴候”と耐糖能異常などの特徴的な臨床像を呈する。

(1) 副腎性クッシング症候群

(1)副腎腺腫
本症の治療法の第一選択はあくまでも手術療法であり、薬物療法は補助的である。手術(開腹術あるいは腹腔鏡下手術)により副腎腺腫摘出を行い、萎縮した健側の副腎皮質機能が回復するまでヒドロコルチゾンの補充療法を行う467)。補充療法は通常半年から数年必要であり、この間、ストレスによる急性副腎不全の発症に注意する。
術前療法や救急時の治療、あるいは手術適応がない場合、あるいは手術による完全摘出が不可能な場合には、中枢神経作動薬(メシル酸ブロモクリプチンなど)や3β-水酸化ステロイド脱水素酵素阻害薬、Ca拮抗薬などによる薬物療法を行う。

(2)副腎癌
患側副腎の摘出を行うが、完全摘出の可能な症例は少ない。手術不可能な症例、再発例、あるいは転移のある症例では、抗癌薬や3β-水酸化ステロイド脱水素酵素阻害薬を投与するが、効果は期待しがたい467)

(3)ACTH非依存性大結節性過形成(AIMAH)と原発性副腎皮質小結節性異形成(PPNAD)
AIMAHやPPNADでは、通常、両側副腎全摘術と術後生涯の糖質コルチコイド補充療法が適応となる467)

(2) 副腎性preclinicalクッシング症候群

本邦における副腎偶発腫瘍の1割弱がコルチゾール産生腫瘍とされている455)。本症と診断され、高血圧、全身性肥満、耐糖能異常のいずれかを有する例は副腎腫瘍の摘出を考慮する。術後に高血圧、耐糖能異常などの随伴症状の改善が期待されるが、全例ではない。また、腫瘍径が5cm以上の場合、あるいは5cm未満でも増大傾向のあるものは摘出術を行う468)。稀に、副腎腫瘍摘出後に糖質コルチコイド補充療法を必要とする例もある。

(3) ACTH依存性クッシング症候群

(1)下垂体腺腫
本症も外科手術が原則である。微小腺腫を完全に摘出できない例では、前述した副腎性クッシング症候群における薬物治療に準じた治療が行われるが、降圧薬に抵抗性を示し、専門医でも治療に難渋する例が少なくない469)

(2)異所性ACTH産生腫瘍
小細胞肺癌など悪性腫瘍によるものが多く、前述した“クッシング徴候”を示すことはむしろ少なく、高血圧、低K血症、浮腫、色素沈着を主徴とすることが多い469)。低K血症の成因には鉱質コルチコイド作用を有するDOCの過剰が関与するとされる。原因病巣の外科的摘出が一義的治療であるが、遠隔転移を伴う例では、化学療法、3β-水酸化ステロイド脱水素酵素阻害薬と降圧薬治療が行われる。降圧薬としてはCa拮抗薬とスピロノラクトンの併用が行われる。
 
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