(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
第11章 二次性高血圧

 
特定の原因による高血圧を二次性高血圧といい、欧米の高血圧専門外来での頻度は5%未満〜10%とされ、その中では腎実質性高血圧が大半を占めている(図11-1)414,415,416,417,418,419)。しかし、内分泌性高血圧が高頻度に存在するとの報告が最近増加しており、わが国の報告でも、内分泌性高血圧と腎血管性高血圧だけで高血圧患者の9.1%を占めており、その82%が原因疾患の治療により高血圧が改善したという420)。二次性高血圧では原因疾患の治療により、高血圧の治癒ないしは病状の軽減が期待できることも多く、積極的な鑑別診断が重要である(表11-1)。


図11-1 二次性高血圧の頻度(%)
図11-1 二次性高血圧の頻度(%)
文献414-419を加重平均して算出(高血圧患者12,228名中の割合)


表11-1 二次性高血圧を示唆する所見とその鑑別に必要な検査
原因疾患 示唆する所見 今後必要な検査
腎実質性高血圧 蛋白尿、血尿、尿沈渣異常
血清クレアチニン上昇
高尿酸血症
尿蛋白定量(1g/日以上)
腎機能評価(GFRの推定)
免疫学的検査(血清補体価、IgAなど)
腎エコー、CT、腎生検
糖尿病性腎症 長期の糖尿病歴
尿糖(蛋白尿、浮腫)
糖尿病性網膜症の確認
アルブミン尿・蛋白尿測定、腎機能評価
胃エコー(腎萎縮は少ない)
慢性腎盂腎炎 細菌尿、低比重尿 尿細菌培養、IVP、腎エコー
腎血管性高血圧 高齢者の急激な高血圧発症、増悪
若年者の高血圧、腹部血管雑音
低カリウム血症
PRA*、PAC**測定(カプトプリル負荷試験)
腎エコー、CT、MRI、腎シンチ・レノグラム
血管造影、腎静脈サンプリング
原発性アルドステロン症 四肢脱力、麻痺の既往、夜間頻尿
低カリウム血症
PRA、PAC同時測定(レニン刺激試験)
腹部CT、MRl、副腎静脈サンプリング
褐色細胞腫 発作性頭痛、動悸、発汗
動揺性高血圧、起立性低血圧
血中、尿中カテコラミン測定
腹部CT、MRI、MIBGシンチ
クッシング症候群 中心性肥満、満月様顔貌
伸展性皮膚線状
耐糖能異常、低カリウム血症
ACTH、コルチゾール測定
(日内変動、デキサメタゾン抑制試験)
頭部MRI、腹部CT、MRI、副腎皮質シンチ
甲状腺機能亢進症 体重減少、発汗、頻脈
総コレステロール低下
甲状腺ホルモン測定
甲状腺(頸部)エコー
甲状腺機能低下症 徐脈、浮腫、心嚢液貯留
総コレステロール、CK、LDH上昇
甲状腺ホルモン測定
甲状腺(頸部)エコー
副甲状腺機能亢進症 高カルシウム血症 PTH測定
血管性高血圧 血圧の左右差、上下肢差
血管雑音
胸・腹部CT、MRI(MRA)
血管造影
薬剤誘発性高血圧 薬物の使用歴
治療抵抗性、難治性高血圧
低カリウム血症
薬物使用歴の再確認
*PRA:血漿レニン活性 **PAC:血漿アルドステロン濃度
 
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