(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第9章 特殊条件下高血圧 |
2)高血圧緊急症および切迫症
h 加速型高血圧-悪性高血圧
拡張期血圧120〜130mmHg以上で腎機能障害が急速進行して、放置すると全身症状が急激に増悪し、心不全や高血圧性脳症、脳出血などを発症して予後不良である。従来、乳頭浮腫(Keith-Wagener分類IV度)を伴う悪性高血圧と、浸出性病変(Keith-Wagener分類III度)を伴う加速型高血圧を区分していた。しかし、両者に臓器障害の進行や生命予後に差はなく、最近は、まとめて加速型高血圧-悪性高血圧と呼ぶ。高血圧発症時から血圧が高いこと、降圧治療の中断、長期にわたる精神的・身体的負荷が悪性高血圧の発症に関与する375)。同一施設の検討で、以前(1971年から1983年までの症例)に比べ、最近(1984年から1999年までの症例)は、眼底所見、左室肥大、腎障害などの臓器障害の程度がより軽症となっている376,377)。また、前者の5年生存率は本態性高血圧によるもので79%、慢性糸球体腎炎によるもので100%であった。慢性糸球体腎炎による患者で12カ月以内に慢性透析へ移行した割合は、前者で88%であったが、後者では46%と改善している。
急速に正常域まで下げる必要はなく、経口薬によってコントロールできる場合が多い。高血圧の病歴が長い者が多く、急速な降圧は重要臓器の虚血をきたす危険を伴う。ナトリウム(Na)・水貯留を伴う場合には、ループ利尿薬を併用する。本態性高血圧由来の例377)や膠原病の腎クリーゼでは、RA系の亢進が病態形成に関与しているのでACE阻害薬やARBの効果が期待されるが、過度の降圧を避けるため少量から開始する。