(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第9章 特殊条件下高血圧 |
1)難治性高血圧
b 原因と対策(表9-1)
難治性を示す原因として、正確な血圧値が捉えられていない(白衣高血圧、カフサイズが合っていない、偽性高血圧など)、降圧治療が不十分(服薬継続率の不良、生活習慣の修正ができていないなど)、実際に血圧が下がりにくい状態(体液量過多、肥満、睡眠時無呼吸症候群の存在、降圧薬の作用を減弱するような薬物や食品をとっているなど)がある。また、二次性高血圧を本態性高血圧と誤診して治療していることもある。実際、過剰の塩分摂取、利尿薬が使用されていないか、適正に使用されていないとき、また腎障害の存在では、体液量過多に起因する治療抵抗性を示すことが多い。このようなコントロール不良の高血圧では、利尿薬の適正な使用により降圧が認められる場合が多い。胸郭体液量をインピーダンス法で調べ利尿薬の量を調節すると、難治性高血圧患者の血圧コントロールが改善したと報告されている369)。
一方、患者のコンプライアンスの問題も大きい。患者への薬物服用についての説明が不十分で、患者が降圧治療を十分に受け入れていない場合、また、主治医が薬物の副作用に気づかない場合は、服薬継続の不良に結びつく。高血圧専門外来を10年間連続通院した患者の調査では、血圧コントロール良好のものは、高血圧治療に対する認知度が高く、体重増加が少なく、Ca拮抗薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の処方を受けているものが多かった370)。また、血圧コントロールとその要因に関して調べた調査では、各主治医の治療に対する姿勢が最も大きな要因であった371)。これらの報告より、血圧コントロールの向上のためには、主治医の治療に対する積極性、具体的には患者の高血圧治療に対する認知度を上げる努力、生活習慣修正への励まし、適正な降圧薬の選択が重要である。
難治性の患者の場合、まず表9-1に挙げた各種の要因がないかどうかを検討する。血圧測定や服薬状況に問題がなく、3薬以上の降圧薬で数カ月治療しても満足な降圧効果が得られない場合は、減塩と適正体重の達成に向けた指導を再度行う。次に、もし利尿薬が使用されていなければ使用を開始、また使用されていれば、その用量と種類の調整を試みる。サイアザイド系利尿薬は1/2錠から始め、最大限2錠までとする。腎機能障害がある場合はループ利尿薬を用いる。利尿薬以外では、Ca拮抗薬、ACE阻害薬かARB、β遮断薬かαβ遮断薬の三つの範疇から2〜3薬を選ぶ。少量のアルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン12.5〜50mg)の追加投与が有効であったとする報告がある372)。同じクラスの薬物の重複は避けるが、β遮断薬とα遮断薬、もしくは中枢性交感神経抑制薬の併用、また、サイアザイド系利尿薬とアルドステロン拮抗薬との併用は可能である。多薬併用や大量投与の際は副作用や過度の血圧低下が起こりやすいので、注意深く経過を観察する。これでもなお十分な降圧が得られないときは、二次性高血圧の可能性が大きいので、高血圧専門家(日本高血圧学会特別正会員、FJSH)の意見を求める。
表9-1 高血圧治療における難治性の原因と対策 | |||||||||||||||||||||||||||||||
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