(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
第7章 他疾患を合併する高血圧


7)肝疾患

薬物性肝障害はアレルギー性肝障害と中毒性肝障害に大別されるが、医薬品による肝障害は大部分、アレルギー性肝障害である。降圧薬の肝毒性に関しては、Ca拮抗薬による薬物性肝障害はアレルギー性肝障害と考えられるが、急性肝障害をきたすことは少なく肝障害の発生頻度は低い。ACE阻害薬も肝機能障害の発生頻度は低い。ARBによる肝毒性の報告も極めて稀であり、これらは中断により改善している。β遮断薬はラベタロールを除き肝毒性は低い。ラベタロールは肝細胞の壊死を伴う重症肝炎発症をきたしたとされている。肝硬変患者を対象としたメタアナリシスにおいて、プロプラノロールは胃腸管出血および死亡のリスクを抑制すると報告されている325)。メチルドパが高頻度に肝機能障害をきたすことが従来から知られているが、最近、処方頻度は低いため、報告は少ない。メチルドパは活動性肝疾患およびメチルドパによる肝障害の既往があれば、禁忌とする。利尿薬ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、フロセミドは重篤な肝硬変症では肝性昏睡をきたす危険性があり、慎重な使用が望まれる。急性・慢性肝疾患の治療に当たる場合、常に薬物による原因を念頭におき、使用中は(特に使用初期)、定期的に肝機能をチェックし、薬物による肝障害が疑われる場合には、薬物を中断し肝機能の経過を観察する必要がある。
薬物は (1) 主として肝で代謝され、未変化体として腎からほとんど排泄されない薬物(肝代謝型)、(2) 主に未変化体のまま腎から排泄される薬物(腎排泄型)および (3) 両者で代謝・排泄される薬物(中間型)に大別される。肝代謝型降圧薬を肝機能障害例に用いる場合、降圧薬の肝初回通過効果が低下しているため、血中濃度が高くなり、除去半減期が延長し、生体内利用率が上昇し効果が増強する。したがって、治療開始時には減量するなど用量設定に注意し、服用間隔を延ばすなどの配慮が必要である。肝代謝型降圧薬としては、ARB、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬ニフェジピン、ニルバジピン、β遮断薬プロプラノロール、メトプロロール、ラベタロール、α遮断薬プラゾシン、ドキサゾシンなどがある。
腎排泄型降圧薬は肝障害による使用量の調節の必要はない。大部分のACE阻害薬(カプトプリル、リシノプリル)は腎排泄性である。プロドラッグであるACE阻害薬は肝での活性型への変換が遅延するが、実際にはACE阻害活性への影響は少ない。β遮断薬アテノロール、ナドロールも腎排泄型であり、通常用量が使用される。利尿薬ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、フロセミドも大部分、未変化体のまま腎から排泄される。
 
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