(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第6章 臓器障害を合併する高血圧 |
4)血管疾患
a 大動脈瘤
(1) 大動脈解離
急性大動脈解離は高血圧緊急症のひとつであり、迅速に降圧することが必要である。降圧治療により大動脈解離の進展や大動脈破裂の危険性が減少する298)。大動脈解離を疑ったならば、CTや血管造影検査前からモルヒネなどにより鎮痛するとともに迅速な降圧を図る。もし解離が上行性胸部大動脈を含んでいれば(Stanford A型)破裂の危険性が高いので、原則として急性期に手術治療を選択し、下行性胸部大動脈の解離(B型)であれば降圧治療をそのまま継続する。
迅速な降圧を得るためには静注治療が必須であり、ニトログリセリン、ニトロプルシド、ニカルジピンあるいはジルチアゼムを使用する。ジルチアゼム以外の薬物では心拍数を増加させるため、β遮断薬を同時に経口あるいは静注投与する。心拍数は60〜80/分にコントロールすることが勧められている299)。脳や腎臓などの臓器灌流障害が生じない限り、収縮期血圧を110〜120mmHg以下に維持する300)。
状態が安定していれば数日後から経口降圧治療に移行しうる。十分な降圧を維持するためには、多くの場合、複数の降圧薬の併用投与が必要になる。禁忌がなければβ遮断薬を含んだ降圧薬治療を行う。
大動脈解離の慢性期あるいは手術治療後も降圧治療の継続が必要であり、収縮期血圧120mmHg以下を目標にする。
(2) 大動脈瘤
血管径が大きい場合、あるいは急速に径が拡大している場合など、破裂の危険性が高いと判断される大動脈瘤には手術治療を行う。高血圧を合併する場合は可能な限り降圧することが推奨されている。