(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第6章 臓器障害を合併する高血圧 |
3)腎疾患
b 慢性腎疾患と心血管疾患
慢性腎疾患患者は心血管事故による死亡率が高い250)。透析患者では心血管事故の発症率が高いことはよく知られているが、最近では血清クレアチニン値1.5mg/dl程度(推定GFR 60ml/分未満に相当)の腎機能障害の存在が心血管事故の発症やそれによる死亡の強力な危険因子であることが、高齢者、高血圧、心不全、糖尿病患者など多くのコホートで明らかにされている251,252,253,254,255)。蛋白尿は末期腎不全発症のリスクであると同時に心血管事故死の強力な危険因子でもある256,257)。INSIGHT研究では尿蛋白の存在は心筋梗塞の既往と同程度のリスクであることが示された257)。また、微量アルブミン尿は1型および2型糖尿病患者で糖尿病性腎症への進展を示唆する指標として確立されているが、それ以上に心血管事故死の予測因子として強力であることが報告されている258)。さらに、最近では非糖尿病高血圧患者や一般住民においても微量アルブミン尿が心血管および非心血管死のリスクであることが報告されている259,260)。近年、人口の高齢化や糖尿病患者の増加により、慢性腎疾患を有する患者が増加している。慢性腎疾患患者は他の心血管合併症を有する頻度が高い。したがって、高血圧に尿蛋白や中程度の腎機能障害が合併する場合には高リスク群として治療する必要がある。