(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
第6章 臓器障害を合併する高血圧


3)腎疾患

a 腎機能と血圧

高血圧は腎臓に対して機能的あるいは器質的な変化を早期から多少なりとも及ぼしている。一方、腎障害は高血圧の原因にもなりうる。高血圧と腎臓は相互に密接に関連し、高血圧は腎機能障害を悪化させ、腎機能障害が起こると高血圧がさらに増悪するという悪循環を形成する。したがって、原疾患の治療とともに血圧の厳格な管理が重要となる。
腎機能は30歳代から加齢とともに低下し、通常糸球体濾過率(GFR)は年間約1ml/分の割合で減少する。加齢による腎機能の低下は血圧レベルと直線的に比例し、高血圧では年間4から8ml/分にもなりうる244)。MRFIT試験では腎不全の発症と血圧値の間にJ型カーブ現象は存在せず、末期腎不全の発症は至適血圧で最も少なく、血圧が上昇するにつれて高率となっていた245)。本邦では、沖縄の一般住民約10万人を17年間追跡した研究で同様の結果が得られた246)。男女ともに収縮期または拡張期血圧が10mmHg上昇するごとに相対危険度が約20から30%上昇し、これは、糖尿病でも非糖尿病でも同様であった。また、高血圧が腎機能障害の新規発症のリスクになっていることは、介入試験であるSyst-Eur 研究のサブ解析247)や、当初腎機能が正常な高血圧患者の治療中の血圧レベルが高いほど新規腎機能障害の発症頻度が高かったとする観察研究により示されている248)
慢性腎疾患は自覚症状に乏しいことが多い。また、進行した腎機能障害から末期腎不全への移行を阻止することは困難である。したがって、腎疾患を早期に発見し、治療することが肝要である。腎機能の評価には血清クレアチニン値が広く用いられているが、この値は体重により大きく影響される。米国国立腎臓協会(NKF)のガイドラインでは血清クレアチニン値、体重、年齢、性別からGFRを推定して腎機能の評価をすることを推奨している249)。代表的な計算式を表6-2に示した。慢性腎疾患は推定GFRが60ml/分/1.73m2未満、また、GFRとは関係なく腎臓の構造や機能に3カ月以上続く異常がみられた場合と定義される。後者の場合としては特に微量アルブミン尿の重要性が強調されている。尿所見の評価には随時尿で尿蛋白(あるいはアルブミン)(mg/dl)と尿クレアチニン値(mg/dl)の比(mg/gCr)を用いれば外来でも行える。

表6-2 慢性腎疾患の定義

1. 構造または機能の異常:GFRとは関係なく、3カ月以上にわたる組織、尿・生化学・画像所見の異常
2. 原疾患のいかんにかかわらずGFRで60ml/分/1.73m2未満

Cockcroft-Gaultの計算式

*2002年NKFガイドラインに準拠。
 
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