(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第6章 臓器障害を合併する高血圧 |
2)心疾患
c 心肥大
心肥大は圧負荷の結果生じ、持続的な降圧治療によって退縮することが多い。疫学研究により心肥大は高血圧患者の予後を規定する独立の要因のひとつであることが明らかにされており、心肥大を合併する患者では、死亡率、虚血性心疾患による心事故や心不全の発症率が高い87)。高血圧治療によって心肥大が退縮した患者群では、退縮がみられなかった患者群に比して、心事故の発生率が減少したという報告がある240)。心筋肥大の刺激として収縮期高血圧、拡張期高血圧がともに関与するので、治療に際しては両者のコントロールが必要である。
心肥大の退縮効果を各降圧薬間で直接比較した成績は少ないが、メタアナリシスではRA系抑制薬の効果が最も大きいと報告されている241)。アルドステロン拮抗薬をACE阻害薬との併用にすることで、より顕著な心肥大退縮効果が認められるという本邦における報告もある242)。しかし、心肥大の退縮に最も重要なことは十分な降圧であり、現在第一次薬として汎用されている長時間作用型Ca拮抗薬などの降圧薬でも、持続的な降圧により心肥大を退縮させることが期待できる243)。