(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
第6章 臓器障害を合併する高血圧


1)脳血管障害

c 無症候期

CT、MRIなどの画像診断技術の進歩により、無症候性脳血管障害が高頻度に診断されるようになっている。その診断には1997年に発表された無症候性脳血管障害の診断基準202)が用いられている。無症候性脳血管障害には、画像診断により脳実質病変または脳血管病変を認めるものが区別されているが、高血圧との関連で最も注目を集めているのが、前者の大部分を占める無症候性脳梗塞である。無症候性脳梗塞のほとんどはラクナ梗塞と同様の小梗塞であり、高血圧や加齢が最大の危険因子となる小血管病(small vessel disease)と考えられている。その存在や進展は脳卒中発症や認知機能低下および痴呆症発症の独立した危険因子となることが本邦ならびに欧州の研究により確定しており186,203,204,205,206)、本病態への対応は今後の高血圧診療においても極めて重要である。ただし、無症候性脳梗塞にも、心原性脳塞栓症やアテローム血栓性脳梗塞と同様な病態と考えられる症例も稀ならず報告されており、そのコントロールに際しては、症候性脳梗塞と同様にその発症要因をできるだけ究明して対処することが望ましい。また、T2*強調MRIにより無症候性脳出血(微小出血)が高頻度に検出されるようになり注目されている203,207,208,209)。原則的に、無症候性脳梗塞や脳出血を合併する高血圧患者の降圧療法における目標血圧値や有用な降圧薬は脳血管障害慢性期のそれに準ずるが、PROGRESSのCTサブスタディの結果179)からもより十分な降圧療法が望ましい。
一方、無症候性頸動脈狭窄や未破裂脳動脈瘤も高頻度に見いだされ、脳卒中発症の高リスク群であることが判明している186,203)。これらの病態における降圧療法の意義は確定していないが、降圧に先立ち外科的治療の適応の有無を評価しておくことが重要である。
なお、無症候期では脳血管障害の病態や治療に対する患者の不安も大きく、十分なインフォームドコンセントが極めて重要である203)
 
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