(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第5章 降圧薬治療 |
2)各種降圧薬の特徴と主な副作用
e β遮断薬(含αβ遮断薬)
高血圧治療において、利尿薬とともにこれまで幅広く使用されてきた。その降圧機序の詳細はいまだ明らかでなく、心拍出量の低下、レニン産生・分泌の低下および中枢からの交感神経活動の放出抑制などが考えられている。β遮断薬の種類によって異なるが、使用初期には心拍出量の低下に伴って末梢血管抵抗が増加するが、その後の長期使用では徐々に元に復してくる。
β遮断薬は種類によってその性状がかなり異なる。β受容体のうち、心臓に存在するβ1受容体に選択的に作用する薬物か、心臓外に存在するβ2受容体の遮断効果をも有する薬物かどうか、脂溶性か水溶性か、さらに内因性交感神経刺激作用(ISA)を有するか否かによって分類される。より新しいβ遮断薬は、Ca拮抗作用あるいはKチャネル開口作用などを有し、末梢血管拡張作用を呈するものが多い。
心筋梗塞の再発防止、虚血性心疾患発症防止や心不全の予後改善のためには、ISAのないβ遮断薬の使用が勧められる。
各薬物に共通の副作用は、気管支喘息の誘発や慢性閉塞性肺疾患の悪化、徐脈や房室ブロック、活力の低下や運動選手では運動能力低下などである。さらにインスリン使用中の糖尿病患者では、低血糖発作の発見の遅れも問題となる。このほか、長期間にわたるβ遮断薬の使用者が急に服用を中止した場合に、中断症候群として狭心症の誘発や一過性の血圧上昇を認めることがある。
以上のほか、脂溶性のβ遮断薬は脳への移行によって、悪夢などの中枢神経系に由来する副作用を生じやすい。また血管拡張作用を有さないβ遮断薬では末梢循環障害をきたしやすく、閉塞性動脈疾患の悪化をきたす。ISAのないβ遮断薬では、血清中性脂肪の増加とHDLコレステロールの低下をきたすなど脂質代謝への悪影響がある。一方、ISAのあるβ遮断薬の使用時にはCPKの急上昇をきたすことがある184)。
β遮断薬の中でα遮断作用が強い薬物はαβ遮断薬と呼ばれている。これらの薬物の利点は、β遮断効果に加えてα遮断効果により末梢血管拡張作用が加わることであり、褐色細胞腫のようにα、β両受容体を抑制しなければならない疾患においてαβ遮断薬が有用である。このほかラベタロールは妊娠高血圧において多くの使用経験が積まれ、比較的安全であることが確認されている。
αβ遮断薬の副作用は、非選択性β遮断薬の使用時の副作用に準じる。それ以外ではα遮断効果が強くなるにしたがって立ちくらみが生じやすくなる。