(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
第5章 降圧薬治療


2)各種降圧薬の特徴と主な副作用

d 利尿薬

腎尿細管においてNaと水の再吸収を抑制して循環血液量を減少させて降圧効果をもたらす。投与初期には循環血液量の減少に伴って心拍出量が低下するが、投与を持続するうちに徐々に元に復し、末梢血管抵抗の低下によって降圧効果が維持される181)
利尿薬の中で降圧薬として使用されているのがサイアザイド系利尿薬、サイアザイド類似薬、ループ利尿薬、K保持性利尿薬などである。これらの降圧効果および副作用は各系統の薬物で違いがあり、病態に合わせてこれらの薬物を使い分ける。降圧効果が比較的良好で、安価であり、世界各国で第一次薬とされている。しかし代謝面への副作用から、本邦では併用薬として使用されることが多い。

(1) サイアザイド系利尿薬およびその類似薬

遠位尿細管においてNa再吸収を抑制することにより循環血液量を減少させて降圧効果をもたらす。サイアザイド系利尿薬と構造が異なるが、類似した作用を有するのがサイアザイド類似薬である。クロルタリドンはSHEP、ALLHATで用いられ、心血管病の予防に有用であることが証明されている。
いずれもNa排泄とともにK排泄を促進させ、低K血症をきたしやすい。その程度が強いと不整脈および突然死をきたしやすくなり、心血管系臓器保護効果が消失する可能性があることが報告されている。これらの副作用は常用量の1/4~1/2量の少量投与や、ARB、ACE阻害薬との併用でかなり予防できるが、血清Kの変化に注意し、低K血症時には塩化カリウムの補給や、スピロノラクトンあるいはトリアムテレンといったK保持性利尿薬の併用が必要である。そのほか痛風、高脂血症、耐糖能異常(糖尿病)、勃起不全および脱水に基づく血液濃縮などが注意すべき副作用である。このほか稀な副作用として、日光過敏性皮膚炎や骨髄抑制などが見られ、これらはサイアザイド系利尿薬に固有の副作用である。
代謝性変化が長期予後に悪影響を与える可能性があるので、サイアザイド系利尿薬およびその類似薬の副作用を最小限に抑えるために、少量投与とする。

(2) K保持性利尿薬、アルドステロン拮抗薬

アルドステロン拮抗薬のスピロノラクトンは、腎臓の遠位尿細管および接合集合管に作用して、アルドステロンなど鉱質コルチコイドと拮抗し、Na再吸収およびK+とH+の排泄を抑制し、K+の喪失なく降圧効果をもたらす。
近年アルドステロンの直接作用による心血管系障害作用が指摘されており、重症心不全患者において、従来の治療にスピロノラクトンを加えると死亡率が減少することが報告されている182)
副作用は、男性では勃起不全および女性化乳房、女性では乳房痛および月経異常をきたしやすい。このほか腎障害を有するものでは、高K血症をきたすことがある。より副作用の少ないエプレレノンが米国では使用され、日本でも製造承認の申請が出されている183)
トリアムテレンは主として遠位尿細管に作用して、鉱質コルチコイドとは関係なくNa+とK+の交換を抑制し、K喪失をきたすことなくNa排泄を促進し、軽度の降圧効果をもたらす。単独投与による降圧効果は弱いため、サイアザイド系利尿薬やその類似薬、あるいはループ利尿薬と併用して使用される。
副作用として、腎結石をきたすことがあること、インドメタシンなどのプロスタグランジン産生阻害薬との併用で急速な腎機能低下をきたすことがある。

(3) ループ利尿薬

これらの薬物は、ヘンレ上行脚の管腔側においてNa+/K+/Cl共輸送を抑制することによってClの再吸収を抑制して強力な利尿効果をもたらす。したがって、血清クレアチニンが2mg/dl以上の腎不全を呈する高血圧患者に利尿薬を用いる場合に、ループ利尿薬が勧められる。
副作用は、低K血症、高尿酸血症、高脂血症、耐糖能異常などサイアザイド系利尿薬に類似した副作用がみられるほか、脱水に基づく血液濃縮をきたす頻度はサイアザイド系利尿薬より高い。このほか膵炎や発疹などの副作用をきたすこともある。
副作用の発現を減らすには、必要最小量を用いることである。
 
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