(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第5章 降圧薬治療 |
1)降圧薬選択の基本
欧米では過去30年以上にわたり、降圧薬治療の無作為化比較対照試験が行われてきた。初期には利尿薬、β遮断薬を基礎薬としていたが、最近に至り、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を基礎薬とした成績が発表され、各クラスの降圧薬の有効性についてエビデンスが得られつつある。
Blood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration163)およびStaessenら164)によるメタアナリシスによると、Ca拮抗薬はプラセボと比較して脳卒中を38%減少させ、冠動脈疾患を20%減少させたが、心不全は有意ではないが21%増加させる傾向であった。利尿薬、β遮断薬に比較すると、脳卒中は有意ではないが7〜8%減少させ、冠動脈疾患はほとんど変化させず、心不全は33%増加させた。
ACE阻害薬はプラセボと比較して脳卒中を28%、冠動脈疾患を22%、心不全を18%減少させた。利尿薬、β遮断薬に比較すると、脳卒中は有意ではないが9〜10%増加させ、冠動脈疾患はほとんど変化させず、心不全は有意ではないが4〜7%増加させた。
ARBは利尿薬、β遮断薬に比較すると脳卒中を21〜24%減少させ、冠動脈疾患はほとんど変化させず、心不全を16%減少させた。
本邦での研究でも降圧薬の間で脳血管疾患、虚血性心疾患の頻度に有意差はみられず165,166,167,168,169)、降圧薬治療の有用性は降圧薬のクラス固有の特性よりも主に降圧効果そのものによると考えられている43)。