(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
第4章 生活習慣の修正


4)運動療法

一般に運動をする人は血圧が低く、運動療法は降圧効果がある。これに加えて、身体活動度の大きいものには肥満が少なく、血清脂質レベルも適正で、心血管病の危険因子が少ないという147)。実際、運動はインスリン感受性を亢進することから、メタボリックシンドロームの病態を改善することが期待できる。
運動の種類としては、有酸素運動である軽度の動的な等張性運動(例えば、早歩き、ランニング、水中歩行など)がよい。軽度の運動とは最大酸素摂取量の50%くらいの軽い運動である148)。その理由は、強い運動の方が運動中の血圧上昇が著明であり、同じ運動でも運動強度が強いと無酸素運動となる可能性があるからである。また、運動量としては1日30分以上、できるだけ毎日の定期的な施行が適当である(最近の報告では身体活動の少ない軽症高血圧患者では比較的少ない運動量であっても降圧を認めるという報告がある149)ので、これを達成しない運動でも効果が得られる可能性がある)。このような運動を続けると10週間で50%の者は収縮期血圧20mmHg以上、拡張期血圧10mmHg以上の降圧を認め、平均降圧は11/6mmHgであるという150)。ただし、対象者としては血圧値で中等症以下の心血管合併症のない高血圧患者が妥当であり、特に心不全、虚血性心疾患、脳卒中などの心血管病を有している患者では、運動中の血圧上昇による心血管事故の可能性があるので、事前にメディカルチェックを行い、禁止あるいは制限などの妥当な対策を講じる。また、腎機能障害のあるものは日本腎臓学会の「腎疾患患者の生活指導・食事療法に関するガイドライン」151)に準じて禁止ないし制限を行う。なお、軽度の有酸素運動は高齢者においても合併症なく降圧したという報告152,153)があるので、単に高齢であるからといって運動を制限すべきではないが、運動療法開始前に心血管病の有無を確認すべきである。
 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す