(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第3章 治療の基本方針 |
4)その他の留意事項
c QOLへの配慮
高血圧の治療は長期にわたるので、治療の継続を維持する上でも高血圧患者のQOL(生活の質;quality of life)を損なわないように配慮しなければならない。高血圧患者のQOLの障害度は他の重篤な疾患に比較して少ない。しかし、血圧が高いほど、情緒状況や反応、睡眠、心臓あるいは消化器症状、満足感などに問題がある124)。さらに加齢がQOLに大きく影響している。高齢者ほどQOLの障害度は増加し、個人差が大きくなる特徴がある125)。QOLの評価の範囲は、自覚的な身体症状、精神状況、精神的・肉体的満足度、健康感(well-being)、仕事、趣味、社会活動、家庭、性生活など多岐にわたっているので、これらの項目をできる限り客観的にかつ総合的に評価する。
一方、降圧薬の副作用によるQOLの障害についても十分に注意する。Croogら126)の大規模無作為化比較対照試験は特筆すべき研究といえる。その後多数の降圧薬間の比較試験が行われており、さらにそれらをまとめて統計解析した結果も報告されている127,128)。HOT研究からもうかがえるように、降圧そのものがQOLの改善に好影響を与えているようである。勃起不全(ED)は50歳以上の男性では加齢とともに増加し、高血圧自体がEDの頻度を高めるという報告がある129)。一方、降圧薬治療が泌尿器系臓器の血流を減少させてEDを起こすことも指摘されているが、影響はないとの報告も少なくない130,131)。シルデナフィルなどの PDE-5 阻害薬は硝酸薬以外の薬剤(降圧薬)との併用では副作用は起こらないとされている132)。