(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
第3章 治療の基本方針


3)治療法の選択

c 降圧薬治療

多くの高血圧患者には降圧薬治療が必要である。
本邦で現在降圧薬として使用されている主な薬物は、カルシウム(Ca)拮抗薬(ジヒドロピリジン系とジルチアゼム)、レニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、利尿薬(サイアザイド系および類似薬、カリウム保持性利尿薬、ループ利尿薬)、β遮断薬(αβ遮断薬を含む)、α遮断薬、中枢性交感神経抑制薬(メチルドパ、クロニジンなど)である。作用機序が異なる降圧薬間には副作用にもそれぞれ特徴がある。科学的根拠に基づく治療薬の選択という観点に立てば、利尿薬、β遮断薬、Ca拮抗薬やACE阻害薬の有用性を証明している成績は多い。最近、高血圧患者を対象としてARBの有用性を示した大規模臨床試験の成績も報告されてきている116,117,118)
降圧薬同士を比較した大規模臨床試験やこれらのメタアナリシスによれば、一部の心血管病の抑制には特定の降圧薬がより有効である可能性が示唆されているが、一般的には降圧薬治療による心血管病の抑制は特定の降圧薬の効果によるものではなく、降圧自体が重要であることが示されている。高リスク高血圧患者を対象とした最近の大規模臨床試験118,119)の成績では早期(1〜3カ月)からの降圧の重要性が指摘されているが、急激な治療内容の変更が危険であることも示唆している。
どの降圧薬を選択するにしても、使用上の原則がある。1)降圧薬としては原則として1日1回投与のものを選ぶ120)、2)降圧薬の投与量は低用量から始める、特にサイアザイド系利尿薬はその半錠ないし1/4錠から開始する、3)副作用の発現を抑え、降圧効果を増強するためには適切な降圧薬を組み合わせた併用療法(「第5章 降圧薬治療」参照)を行う、4)最初に投与した降圧薬でほとんど降圧効果を認めなかった場合や忍容性が悪い場合は、作用機序が異なる別の降圧薬に変更する、5)他の疾患を合併している場合は、適応と禁忌に注意して降圧薬を選択し投与する。また、降圧薬と他の疾患に投与されている薬物との相互作用を必ず確かめる。
個々の患者については、病態に即してさらに好ましい治療方針を組み立てる。白衣高血圧(診察室高血圧44))と診断した患者の場合は、危険因子や標的臓器障害の有無などを考慮して治療すべきか否かを決める。治療しないことに決めた場合でも6カ月ごとに慎重に経過を観察する。診察室血圧が正常でも自由行動下血圧が高値を示す逆白衣高血圧121)では、臓器障害の有無を評価する必要がある。
 
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