(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第2章 血圧測定と臨床評価 |
2)血圧値の分類と危険因子の評価
a 血圧値の分類
血圧値と心血管病発症のリスクには正相関が認められるが、血圧値は連続性分布を示すもので、高血圧の定義は人為的になされたものである。1999年WHO/ISHガイドライン44)では混乱を避けるために従来の高血圧の診断基準をJNC VI42)の診断基準に基本的に統一した。その後、2003年にJNC729)、2003ESH-ESCガイドライン43)、2003 WHO/ISH statement73)とガイドラインの改訂がなされた。140/90mmHg以上を高血圧とすることはいずれのガイドラインでも共通である。本邦の久山町研究においても収縮期血圧が120mmHg未満、拡張期血圧が80mmHg未満の心血管病の累積死亡率が最も低く、収縮期血圧140mmHg以上は120mmHg未満に比し、また拡張期血圧90mmHg以上は80mmHg未満に比較して、高齢者を含めて心血管病のリスクが有意に高い13,74)。また、北海道における18年間にわたる前向き疫学研究である端野・壮瞥町研究においても、収縮期血圧140mmHg以上あるいは拡張期血圧90mmHg以上は心血管病死および総死亡の有意な危険因子となる75)。さらにNIPPON DATA 80においても同様に140/90mmHg以上での全循環器病疾患死亡率の上昇を認めている10)。これらのことから、JSH2004においても軽症高血圧以上の高血圧の基準は従来通り140/90mmHg以上とする。JSH2000ガイドラインにおいては、1999 WHO/ISH44)、および2003 ESH-ESCガイドライン43)と同じ血圧分類を採用している47)。あえて前高血圧(prehypertension)という新しい概念を導入するまでもなく、正常高値には、十分に高血圧一次予防への意志が包括されている。また120/80mmHg未満を至適血圧とすることから、120〜129/80〜84mmHgの正常血圧がすでに至適血圧を超えている事実を示唆している。一方、180/110mmHg以上の高血圧を重症と認識することは臨床上有意義であり、2003 ESH-ESCガイドライン43)も2003 WHO/ISH statement73)もこの概念を残していることから、JSH2004ガイドラインもこれを踏襲した。また改訂のたびに血圧レベルの定義と分類が異なることは、無用な臨床現場の混乱を招くことから、JSH2004ガイドラインにおいては、JSH2000ガイドラインの定義と分類をそのまま踏襲することとする(表2-1)。
外来血圧による血圧分類は、降圧薬非服用下で、初診時以後に複数回来院し、各来院時に測定した複数回の血圧値の平均値で決定される。収縮期血圧と拡張期血圧はそれぞれ独立したリスクであるので、収縮期血圧と拡張期血圧が異なる分類に属する場合には高い方の分類に組み入れる。
表2-1 成人における血圧値の分類 | ||||||||||||||||
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