(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第2章 血圧測定と臨床評価 |
1)血圧測定
a 診察室、外来血圧測定
高血圧と診断するには正しい血圧測定が必要である。血圧の測定は診察室(外来)においては水銀圧力計、アネロイド圧力計を用いた聴診法、あるいは水銀圧力計を用いた聴診法と同程度の精度を有する自動血圧計を用い、カフの位置を心臓の高さに保って測定する。近年では、水銀の環境汚染の問題から、ことにヨーロッパでは水銀圧力計の使用は避けられる傾向にある。カフェイン含有物の摂取、ならびに喫煙は、一過性の血圧上昇をきたすことが示されている32,33)ので、診察室(外来)における血圧測定は少なくとも5分間以上の安静座位の状態で行い、30分以内のカフェイン含有物の摂取および喫煙は禁止する。
成人の血圧測定ではカフのゴム嚢の大きさは日本工業規格(JIS)に準拠した幅13cm、長さ22〜24cmのものが通常用いられている。国際的にはゴム嚢の幅は上腕周囲の40%あり、かつ、長さは少なくとも上腕周囲を80%以上取り囲むものが推奨されている。小児や標準体格より外れた肥満者では専用のカフを使用する。
コロトコフ第 I 音を収縮期血圧とし、第V音を拡張期血圧とする。聴診間隙を認める場合には血圧を誤って判定するので、カフ圧を急速に上昇させて前腕へのうっ滞を除いた状態で血圧を測定する。場合によっては触診法を併用する。1〜2分の間隔をおいて複数回血圧を測定し、安定した値(測定値の差が5mmHg未満)を示した2回の平均値を血圧値とする。聴診法においては、カフ排気速度は2〜3mmHg/拍あるいは秒で行う34)。初診時には両側上腕で測定し、左右差があれば高い方の血圧値を採用する。高齢者、糖尿病合併例などでは適宜、臥位および立位で血圧を測定する。下肢動脈(大腿動脈、膝窩動脈、足背動脈)の拍動が微弱であるか触知しない場合、あるいは若年者の高血圧では大動脈縮窄症を除外するために下肢血圧を測定する。下肢血圧の測定は足首に上腕用カフを巻き、後脛骨動脈で聴診する方法と、大腿にカフを巻き(カフのゴム嚢の幅は大腿直径より20%広いものとし、15〜18cmのものを用いる)膝窩動脈で聴診する方法がある。血圧は変動しやすいので、高血圧の診断は少なくとも2回以上の異なる機会における血圧値に基づいて行うべきである。