(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第1章 高血圧の疫学 |
3)日本人の高血圧の特徴
a 多い食塩摂取量
かつて本邦に高血圧が多く、脳卒中が多発したのは一つには食塩の過剰摂取があった。食塩摂取量が多くなると血圧が高くなる。INTERSALT研究では、24時間蓄尿による食塩摂取量の多い集団では血圧が高く、また、個人の血圧と個人の食塩摂取量にも正の関連があった17)。
現在の本邦の食塩摂取量は、24時間蓄尿からの成績からは、1日12g程度となっている17,18,19)。女性では男性よりもエネルギー摂取量の少ない分だけ低く、1985年当時のINTERSALT研究では、本邦の20歳代女性の食塩摂取量の推定値は、10g程度であった17)。1997年当時のINTERMAPによる24時間蓄尿成績からの40〜59歳男性の推定値もほぼ12g程度であった19)。240人を調査した2000年当時の35〜60歳男性の事業所勤務者では、同じく24時間蓄尿による食塩摂取量の推定値は約11gであった20)。
国民栄養調査からの国民一人あたりの食塩摂取量は約11.5g程度であり、本邦の現在の食塩摂取量は1日11〜12g程度であると考えられる。
24時間蓄尿による過去の成績では、1950年代の東北地方では、その食塩摂取量の推定値は1日25gにも達していた21)。この成績からすると、本邦の食塩摂取量は大きく減少し、現在の12g前後になった。
しかし、「健康日本21」の食塩摂取量の目標値は、1日あたり10g未満であり12)、ここ10年以上は蓄尿成績から判断すると大きな低下は見られず、その目標値には未だ達していない17,18,19)。日本を含む東アジア地域では食塩摂取量が多く、特に体重あたりの24時間蓄尿からのナトリウム(Na)排泄量は、中国、韓国、日本ともINTERSALT研究の世界32カ国52集団の中では、すべて高い集団に属している22)。
国民の食塩摂取量の減少はその国民の血圧低下に影響を与える。INTERSALT研究では、集団の食塩摂取量が1日6g低下すれば、30年後の収縮期血圧の上昇が9mmHg抑制されると推定している17)。Dietary Approaches to Stop Hypertension(DASH)研究では、減塩による血圧低下効果を検証しているが、それではINTERSALT研究から推定されたものと同程度であった23)。本邦の高血圧対策にとってさらなる減塩の推進が必要である。