(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)
第4章 治療
■ Clinical Question 10
腰椎椎間板ヘルニア後方摘出術における手技の工夫は瘢痕形成予防や術後臨床症状に関係するか
推奨
【Grade B】
遊離脂肪移植は硬膜周囲の瘢痕形成の予防に役立つが,術後臨床症状に対する影響は少ない.
背景・目的
腰椎椎間板ヘルニア後方摘出術術後の神経根周囲の瘢痕癒着形成が症状の改善不良や再悪化につながるとする意見と,瘢痕癒着形成と術後症状は関連しないとする意見がある.これらの議論は術中の手技の工夫がどのような画像上,臨床上の結果をもたらすかによって検討することが可能である.
解説
遊離脂肪移植は,腰椎椎間板ヘルニア後方摘出術後1年時の硬膜周囲の瘢痕形成の予防に役立つが,術後臨床症状とは関連しないとの報告がある(DF01386,EV level 2).同様に脂肪移植あるいは,酸化セルロースを神経根除圧後の硬膜外腔に挿入し,非挿入群と術後1年時に比較したところ,3群間にMRI画像上の瘢痕形成,臨床症状に関して有意差がみられなかったと報告されている(DF01592,EV level 2).また,術後2年時の身体所見,生活上の結果を比較した報告では,硬膜外脂肪移植群の非移植群に対する有意差は示されていない(DF00109,EV level 5).しかしながら,74例のRCTにおいては,臨床症状およびMRI 上の瘢痕のいずれにおいても,遊離脂肪移植術有用性が示されている(D2F02214,EV level 4).一方,わが国では認可されていないが,欧米で多用されている癒着防止薬であるADCON-Lのヘルニア摘出後の硬膜外腔への注入では,ADCON-Lの使用によって非使用例に比べ硬膜外瘢痕が有意に減少し,術後の疼痛抑制に関しても効果が高かったとしている[(DF00639,EV level 1),(DF00640,EV level 2)].一方,398例の顕微鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術のmeta-analysisでは,術後1ヵ月,6ヵ月時の根性疼痛と歩行に関してADCON-L使用の有無に有意差は示されず,6ヵ月時のMRIによる硬膜外腔の瘢痕の拡がりに関するスコアリングにおいても両群間の有意差は示されなかった(DF00160,EV level 1).
顕微鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術において黄色靱帯を温存し硬膜周辺の脂肪,血管組織を温存する方法は,通常の顕微鏡非使用のヘルニア摘出術に比べ,術後の画像上の硬膜外線維化を抑制し,また術後の疼痛抑制,職業復帰に関しても有意に良好であることが示されている(DF00087,EV level 6).
顕微鏡視下手術でヘルニアのみの摘出とヘルニアのみならず母髄核も摘出した場合とを比較したRCTがあり,術後のProlo Scaleでの成績はヘルニアのみの摘出のほうが著明改善例が多い傾向にあったと報告している(D2F02240,EV level 3).一方で,顕微鏡下ヘルニア摘出術の椎間板切除量に着目した報告では長期成績,再発率,術後の不安定性と切除量とは関連がなかったとの報告もある(D2F01916,EV level 3).
顕微鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術において黄色靱帯を温存し硬膜周辺の脂肪,血管組織を温存する方法は,通常の顕微鏡非使用のヘルニア摘出術に比べ,術後の画像上の硬膜外線維化を抑制し,また術後の疼痛抑制,職業復帰に関しても有意に良好であることが示されている(DF00087,EV level 6).
顕微鏡視下手術でヘルニアのみの摘出とヘルニアのみならず母髄核も摘出した場合とを比較したRCTがあり,術後のProlo Scaleでの成績はヘルニアのみの摘出のほうが著明改善例が多い傾向にあったと報告している(D2F02240,EV level 3).一方で,顕微鏡下ヘルニア摘出術の椎間板切除量に着目した報告では長期成績,再発率,術後の不安定性と切除量とは関連がなかったとの報告もある(D2F01916,EV level 3).
文献