(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)
第4章 治療
■ Clinical Question 9
若年者腰椎椎間板ヘルニアに対して手術適応はあるか
推奨
【Grade B】
椎間板切除術の長期成績は良好であり,保存的治療に抵抗する症例ではヘルニア摘出術の適応としてよい.
背景・目的
若年者腰椎椎間板ヘルニア治療では,成人例と同様に保存的治療が原則であるが,保存的治療で無効な場合の手術的治療決定を迷う場合が多い.発育期の脊柱組織に対する術後の二次的影響が心配されることがその要因である.
解説
若年者腰椎椎間板ヘルニアに対するRCT(randomized controlled trial)はない.一方,コホート研究やcase-control studyでは長期間の経過観察報告がある.11〜16歳(平均15歳)の72手術例を術後12〜45年間(平均27.8年)経過観察した報告では,Kaplan-Meierのsurvivor analysis の結果,術後10年で80%,20年でも74%が追加手術不要という結果であり,その術後長期成績は良好で,保存的治療にて抵抗する例では手術をすべきであること,また高度の不安定性がない例では固定術の追加は不要であると結論している(DF00802,EV level 5).17歳以下のヘルニア摘出術に関する平均10.5年の経過観察報告では,椎間板高の狭窄が明らかでないこと,MRI上の信号強度変化が多椎間でみられたが臨床症状とは相関せず,術後の長期経過は良好であったため,診断が確実で,ある程度の期間の保存的治療で無効な場合には,手術的治療を選択してよいと結論している(DF00993,EV level 5).16歳以下の11手術例を平均9年経過観察した報告では,小児の腰椎椎間板ヘルニアの手術的治療は,早期に復学が可能であり長期経過観察でも満足できる結果であることを示している(DF01110,EV level 6).また17歳以下の手術例の分析的横断研究でも,術後の健康状態,肉体機能,疼痛評価で問題点がないことを示している(DF00395,EV level 9).
文献