(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)
第4章 治療
■ Clinical Question 7
術式間に成績の差はあるか
要約
【Grade A】
椎間板内酵素注入療法(わが国未承認)は手術的治療(ヘルニア摘出術)よりも劣り,さらに経皮的髄核摘出術は酵素注入療法よりも劣っている.
【Grade I】
レーザー椎間板蒸散法による報告では,経皮的髄核摘出術と同程度の臨床結果が示されているが,隣接組織への副作用,合併症が多く,また健康保険適用外である点から,推奨すべき術式とはいえない.
【Grade I】
固定術の併用に関しては一定の見解が得られていない.
背景・目的
腰椎椎間板ヘルニアの手術としては,通常のヘルニア摘出術(顕微鏡下および内視鏡下摘出術も含む)以外に,ヘルニア摘出に椎間固定が併用されることもある.また,手術的治療と保存的治療の中間的な治療法として椎間板内に酵素を注入するchemonucleolysisや経皮的髄核摘出術,レーザーによる椎間板組織の蒸散法も行われている.これら手術の術式による成績がいかなるものであるかを知ることは,医師側が術式を選択する際や,患者に対するインフォームドコンセントにおいては必須である.
特にレーザー蒸散法は経皮的椎間板摘出術から派生した術法であるが,腰椎椎間板ヘルニア治療における位置付けが明らかにされていないまま,臨床応用例が増加している.また,蒸散そのものが椎間板組織に及ぼす影響については未知な部分が多く,適応,臨床結果,合併症に関する標準的な情報をまとめる必要がある.
特にレーザー蒸散法は経皮的椎間板摘出術から派生した術法であるが,腰椎椎間板ヘルニア治療における位置付けが明らかにされていないまま,臨床応用例が増加している.また,蒸散そのものが椎間板組織に及ぼす影響については未知な部分が多く,適応,臨床結果,合併症に関する標準的な情報をまとめる必要がある.
解説
手術術式間の差については,1966〜1998年に腰椎椎間板ヘルニアの手術的治療について発刊されたRCT論文26編のmeta-analysisが行われている.この解析の結論としては通常のヘルニア摘出術と顕微鏡下ヘルニア摘出術は同等で,通常のヘルニア摘出術は酵素(キモパパイン)注入療法(わが国未承認)より有効で,経皮的髄核摘出術は酵素(キモパパイン)注入療法(わが国未承認)よりも劣るとしている(DF00705,EV level 1).エビデンスレベルの低い手法で術式間の比較検討した報告においても同様の結果であり,術式間の臨床症状に対する成績は「通常のヘルニア摘出術≒顕微鏡下ヘルニア摘出術>酵素(キモパパイン)注入療法(わが国未承認)>経皮的髄核摘出術」ということになる[(DF02431,EV level 5),(DF02582,EV level 5),(DF02843,EV level 5),(DF03147,EV level 5),(DF03397,EV level 5),(DF03489,EV level 5),(DF03520,EV level 5)].
レーザー椎間板蒸散法の適応は,経皮的椎間板摘出術と同様にcontained typeとする報告が多い.KTPレーザーによる治療例に関する椎弓切除,椎間板摘出術例との比較検討では,レーザー群の有効率は66%で,対照群では85%であったとしている(DF01185,EV level 6).経皮的内視鏡的レーザー椎間板蒸散法に関する10の論文のレビューでは,レーザーの種類,蒸散のエネルギー総量などが著しく異なり,またいずれも症例数が少なく顕微鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術をはじめとする他の手術法と比較検討することはできないと述べられている(DF00333,EV level 11).一方,レーザー椎間板蒸散法の術前後の387例の検討では,MRI画像上4例で隣接椎体の骨壊死がみられ,術前にみられなかった強い腰痛が出現しており,本法による椎間板,椎体への悪影響も明らかにされてきている(DF00530,EV level 7).またレーザー椎間板蒸散法を実施中に下肢に激痛が走り,4週後に追加された顕微鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術で当該神経根の著明な腫脹と炭化巣が診断されたとの報告もある(DF10005,EV level 8).さらに,レーザー椎間板蒸散法術後の再手術例10例の検討では,臨床症状の改善がなく,MRI上は全10例でヘルニアの縮小は認めず,8例で隣接椎体の輝度変化が示されている(D2J00030,EV level 6).このようにレーザー椎間板蒸散法は隣接組織への熱,圧力波の影響などがあること,椎間板摘出範囲が限定しにくいこと,健康保険で適応されず高額な自己負担費用が患者側に必要なこと,有効群率が70%前後であることから,経皮的椎間板摘出術より優れた術式とする根拠はないと考えられる.
固定術の併用に関しては厳密な群わけをしたRCT論文は認められないが,比較検討した報告によれば,全般的な成績には差がないものの,固定術を併用したほうが腰痛の遺残が有意に少ないとの報告(DF00475,EV level 5)や成績には差がないものの固定術を併用したほうが復職までの期間が長いとの報告(DF03408,EV level 5)もあり,固定術の併用に関しては一定の見解が得られていない.
レーザー椎間板蒸散法の適応は,経皮的椎間板摘出術と同様にcontained typeとする報告が多い.KTPレーザーによる治療例に関する椎弓切除,椎間板摘出術例との比較検討では,レーザー群の有効率は66%で,対照群では85%であったとしている(DF01185,EV level 6).経皮的内視鏡的レーザー椎間板蒸散法に関する10の論文のレビューでは,レーザーの種類,蒸散のエネルギー総量などが著しく異なり,またいずれも症例数が少なく顕微鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術をはじめとする他の手術法と比較検討することはできないと述べられている(DF00333,EV level 11).一方,レーザー椎間板蒸散法の術前後の387例の検討では,MRI画像上4例で隣接椎体の骨壊死がみられ,術前にみられなかった強い腰痛が出現しており,本法による椎間板,椎体への悪影響も明らかにされてきている(DF00530,EV level 7).またレーザー椎間板蒸散法を実施中に下肢に激痛が走り,4週後に追加された顕微鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術で当該神経根の著明な腫脹と炭化巣が診断されたとの報告もある(DF10005,EV level 8).さらに,レーザー椎間板蒸散法術後の再手術例10例の検討では,臨床症状の改善がなく,MRI上は全10例でヘルニアの縮小は認めず,8例で隣接椎体の輝度変化が示されている(D2J00030,EV level 6).このようにレーザー椎間板蒸散法は隣接組織への熱,圧力波の影響などがあること,椎間板摘出範囲が限定しにくいこと,健康保険で適応されず高額な自己負担費用が患者側に必要なこと,有効群率が70%前後であることから,経皮的椎間板摘出術より優れた術式とする根拠はないと考えられる.
固定術の併用に関しては厳密な群わけをしたRCT論文は認められないが,比較検討した報告によれば,全般的な成績には差がないものの,固定術を併用したほうが腰痛の遺残が有意に少ないとの報告(DF00475,EV level 5)や成績には差がないものの固定術を併用したほうが復職までの期間が長いとの報告(DF03408,EV level 5)もあり,固定術の併用に関しては一定の見解が得られていない.
文献