(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)
第4章 治療
■ Clinical Question 1
腰椎椎間板ヘルニアに対する硬膜外副腎皮質ステロイド薬注入療法は有効か
推奨
【Grade C】
坐骨神経痛を有する腰椎椎間板ヘルニアに対する硬膜外副腎皮質ステロイド薬の注入療法は保存的治療の1つの選択肢として,治療開始早期で疼痛軽減の可能性がある治療法である.
背景・目的
腰椎椎間板ヘルニアに対する保存的治療の1つとして硬膜外腔への局所麻酔薬の注入が行われるが,その際に副腎皮質ステロイド薬を添加することがある.その有効性に関して短期ならびに中長期でも認められないとの報告と,短期での有効性を支持する報告があった.腰痛を生じる脊椎疾患全般を対象とせず,腰椎椎間板ヘルニアの病態に限定して検討を行うことが本薬の硬膜外への使用の是非を考えるうえで重要である.
解説
坐骨神経痛を有する患者への神経根周囲への副腎皮質ステロイド薬の浸潤治療は,対照群とした生理食塩水浸潤群に比べて,椎間板へルニアによる下肢痛軽減に短期間での効果発現がみられ,1年以内における手術への移行を明らかに減少させたとの報告がある(DF00267,EV level 2).同様に,椎間孔経由ならびに椎弓間のアプローチでの硬膜外副腎皮質ステロイド薬の短期的効果を認めたとする論文が報告されている[(DF00086,EV level 4),(DF00352,EV level 4)].
しかし,初版以降では短期的な効果を含め,ステロイドの有効性を支持する報告はなかった.保存的治療に効果がなかった片側性の根性痛を有した患者に神経根ブロックを,ブピバカインとメチルプレドニゾロン併用とまたはブピバカイン単独による1回の神経ブロックによる効果を比較した報告では,Oswestry Disability Index,背部痛と下肢痛のVAS,跛行距離と患者の主観的満足度で評価し,施行後1日,2週,4週,6週,12週の時点ですべての項目において両群間に統計学的な有意差はなかったと報告している(D2F01931,EV level 4).
腰椎椎間板ヘルニア49例,腰部脊柱管狭窄症20例の腰痛・下肢痛に対し,神経根ブロック施行時に局所麻酔薬とステロイド併用と局麻薬を単独で使用し,ブロック施行前,施行後1時間,施行後1週間のVASおよびpresent pain intensity(PPI)を検討した報告がある(D2J00286,EV level 5).結果として両群とも施行後1時間と施行後1週間のVASおよびPPIは施行前と比較して有意に低値となり改善を示したが,ステロイド併用群と単独群の間には有意差はなかったとしている(D2J00286,EV level 5).
片側下肢痛を有する椎間板ヘルニアに対する神経根ブロックの治療効果をステロイド使用群(20例)と非使用群(20例)で比較した報告もある(D2J00601,EVlevel 5).治療効果をブロック後1週間,1ヵ月,3ヵ月の時点で,下肢痛のVAS,SF12,Roland-Morris スコアを用いて判定した結果,両群間に有意差は認めなかったと報告している(D2J00601,EV level 5).
また,椎弓間よりの硬膜外注射の報告では,151〜180日持続している腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛患者に2mLの酢酸プレドニゾロン(50mg)または2mLの等張食塩水を2日の間隔で3回施行し,VASによる疼痛評価,SLRテスト,Roland-Morrisスコアなどを用い,0日,5日,20日と35日目に評価したところ,両群ともに時間経過とともに明らかに改善していったものの,両群間に有意差はなかったとしている(D2F00192,EV level 4).以上のような結果から,腰椎椎間板ヘルニアに対する硬膜外副腎皮質ステロイド薬注入療法の治療早期での有効性に関する報告は有効とするものもあれば差がないという報告もあることになり,推奨度はAからCに変更した.
しかし,初版以降では短期的な効果を含め,ステロイドの有効性を支持する報告はなかった.保存的治療に効果がなかった片側性の根性痛を有した患者に神経根ブロックを,ブピバカインとメチルプレドニゾロン併用とまたはブピバカイン単独による1回の神経ブロックによる効果を比較した報告では,Oswestry Disability Index,背部痛と下肢痛のVAS,跛行距離と患者の主観的満足度で評価し,施行後1日,2週,4週,6週,12週の時点ですべての項目において両群間に統計学的な有意差はなかったと報告している(D2F01931,EV level 4).
腰椎椎間板ヘルニア49例,腰部脊柱管狭窄症20例の腰痛・下肢痛に対し,神経根ブロック施行時に局所麻酔薬とステロイド併用と局麻薬を単独で使用し,ブロック施行前,施行後1時間,施行後1週間のVASおよびpresent pain intensity(PPI)を検討した報告がある(D2J00286,EV level 5).結果として両群とも施行後1時間と施行後1週間のVASおよびPPIは施行前と比較して有意に低値となり改善を示したが,ステロイド併用群と単独群の間には有意差はなかったとしている(D2J00286,EV level 5).
片側下肢痛を有する椎間板ヘルニアに対する神経根ブロックの治療効果をステロイド使用群(20例)と非使用群(20例)で比較した報告もある(D2J00601,EVlevel 5).治療効果をブロック後1週間,1ヵ月,3ヵ月の時点で,下肢痛のVAS,SF12,Roland-Morris スコアを用いて判定した結果,両群間に有意差は認めなかったと報告している(D2J00601,EV level 5).
また,椎弓間よりの硬膜外注射の報告では,151〜180日持続している腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛患者に2mLの酢酸プレドニゾロン(50mg)または2mLの等張食塩水を2日の間隔で3回施行し,VASによる疼痛評価,SLRテスト,Roland-Morrisスコアなどを用い,0日,5日,20日と35日目に評価したところ,両群ともに時間経過とともに明らかに改善していったものの,両群間に有意差はなかったとしている(D2F00192,EV level 4).以上のような結果から,腰椎椎間板ヘルニアに対する硬膜外副腎皮質ステロイド薬注入療法の治療早期での有効性に関する報告は有効とするものもあれば差がないという報告もあることになり,推奨度はAからCに変更した.
文献