(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)
第2章 病態
■ Clinical Question 4
腰椎椎間板ヘルニア退縮の機序は何か
要約
【Grade C】
腰椎椎間板ヘルニアの退縮は,無機質な椎間板に血管新生によって炎症が惹起され,サイトカインの作用でさまざまな酵素が誘導されて腰椎椎間板ヘルニアを分解するために生じる
背景・目的
腰椎椎間板ヘルニアはMRIで脱出型,ヘルニアのサイズが大きい,リング状に造影される症例は高率に退縮がみられることが知られている.ここでは腰椎椎間板ヘルニアの退縮の組織学的,分子生物学的特徴について検討する.
解説
64例の摘出ヘルニア塊の組織学的検討を行った報告では,ヘルニアの型に関係なく73.4%にヘルニア塊の周辺に新生小血管像を伴う被膜組織を認めたが,ヘルニア塊の先端部における新生血管の数は脱出型ヘルニアで明らかに多く認められ,腰椎椎間板ヘルニアが後縦靱帯を穿破することが,血管新生の反応を促進するとしている(DF00599, EV level 7).
また手術時の腰椎椎間板ヘルニアの形態学的観察と摘出した組織の組織学的検討を行った報告では,脱出型ヘルニアの57.9%にヘルニア塊周辺に炎症性変化を主体とした被膜形成がみられ,この被膜は脱出型に強く形成されていた.また,被膜形成には非特異的炎症反応が強く関与し,周囲との癒着が生じていることを示した(DJ00447, EV level 7).一方,腰椎椎間板ヘルニアの手術摘出標本を免疫組織学的に検討した結果,sequestration,transligamentous extrusionには脱出髄核の表面と周囲結合織にマクロファージやT細胞を認め,protrusion, subligamentous extrusionではこれらの細胞浸潤は認められなかったとする論文もある[(DJ01180, EV level 6),(DJ00183, EV level 7)].これらは,脱出型椎間板ヘルニアに血管新生が促進され,その結果マクロファージを中心とする炎症性細胞がヘルニアに浸潤することを示している.
また,腰椎椎間板ヘルニアの手術時に摘出した検体中に炎症性サイトカインであるIL-8,TNF-α,IL-1α,RANTES, IL-10 mRNAの発現が報告されている.これらのサイトカインが椎間板ヘルニアの炎症にそれぞれどのように寄与しているか今後詳細な検討が待たれる(D2F02298, EV level 7).
腰椎椎間板ヘルニアの手術検体63例と側弯症手術時に摘出した9例の椎間板組織を培養し,マクロファージの遊走や血管新生に作用する走化性サイトカイン(Monocyte chemotactic protein-1,Interleukin-8)をELISA法で計測すると,脱出型ヘルニアで有意に発現が亢進していたと報告している(D2F02285, EV level 6).
腰椎椎間板ヘルニアの手術20検体では,CD34陽性の血管内皮細胞と血管内皮成長因子であるvascular endothelial growth factorが発現し,特に脊柱管近傍での発現が顕著であったと報告している.CD34陽性の血管内皮細胞は内腔を形成してその周囲にはCD68陽性のマクロファージが浸潤していたと述べている(D2F01887, EV level 6).
腰椎椎間板ヘルニアの手術検体にはMatrix metalloproteinase(MMP)が発現し,退縮の際には腰椎椎間板ヘルニアの器質を分解すると考えられていた.ビーグル犬などの犬種では腰椎椎間板ヘルニアを自然発症するが,リコンビナントMMP-3とMMP-7を腰椎椎間板ヘルニア高位に注入すると器質を分解して退縮することがMRI や脊髄造影,組織学的に明らかにされている(D2F01169, EV level 6).また,変形性関節症や関節リウマチの軟骨組織の分解においてアグリカンを分解するアグリカネースの存在が注目を浴びている.腰椎椎間板ヘルニア手術22検体において,マクロファージの浸潤が著しい肉芽組織にはADAMTS(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs)-4(aggrecanse-1)の発現が顕著であることが報告されている(D2F01963, EV level 9).
また手術時の腰椎椎間板ヘルニアの形態学的観察と摘出した組織の組織学的検討を行った報告では,脱出型ヘルニアの57.9%にヘルニア塊周辺に炎症性変化を主体とした被膜形成がみられ,この被膜は脱出型に強く形成されていた.また,被膜形成には非特異的炎症反応が強く関与し,周囲との癒着が生じていることを示した(DJ00447, EV level 7).一方,腰椎椎間板ヘルニアの手術摘出標本を免疫組織学的に検討した結果,sequestration,transligamentous extrusionには脱出髄核の表面と周囲結合織にマクロファージやT細胞を認め,protrusion, subligamentous extrusionではこれらの細胞浸潤は認められなかったとする論文もある[(DJ01180, EV level 6),(DJ00183, EV level 7)].これらは,脱出型椎間板ヘルニアに血管新生が促進され,その結果マクロファージを中心とする炎症性細胞がヘルニアに浸潤することを示している.
また,腰椎椎間板ヘルニアの手術時に摘出した検体中に炎症性サイトカインであるIL-8,TNF-α,IL-1α,RANTES, IL-10 mRNAの発現が報告されている.これらのサイトカインが椎間板ヘルニアの炎症にそれぞれどのように寄与しているか今後詳細な検討が待たれる(D2F02298, EV level 7).
腰椎椎間板ヘルニアの手術検体63例と側弯症手術時に摘出した9例の椎間板組織を培養し,マクロファージの遊走や血管新生に作用する走化性サイトカイン(Monocyte chemotactic protein-1,Interleukin-8)をELISA法で計測すると,脱出型ヘルニアで有意に発現が亢進していたと報告している(D2F02285, EV level 6).
腰椎椎間板ヘルニアの手術20検体では,CD34陽性の血管内皮細胞と血管内皮成長因子であるvascular endothelial growth factorが発現し,特に脊柱管近傍での発現が顕著であったと報告している.CD34陽性の血管内皮細胞は内腔を形成してその周囲にはCD68陽性のマクロファージが浸潤していたと述べている(D2F01887, EV level 6).
腰椎椎間板ヘルニアの手術検体にはMatrix metalloproteinase(MMP)が発現し,退縮の際には腰椎椎間板ヘルニアの器質を分解すると考えられていた.ビーグル犬などの犬種では腰椎椎間板ヘルニアを自然発症するが,リコンビナントMMP-3とMMP-7を腰椎椎間板ヘルニア高位に注入すると器質を分解して退縮することがMRI や脊髄造影,組織学的に明らかにされている(D2F01169, EV level 6).また,変形性関節症や関節リウマチの軟骨組織の分解においてアグリカンを分解するアグリカネースの存在が注目を浴びている.腰椎椎間板ヘルニア手術22検体において,マクロファージの浸潤が著しい肉芽組織にはADAMTS(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs)-4(aggrecanse-1)の発現が顕著であることが報告されている(D2F01963, EV level 9).
文献