(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)
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1.4 まとめと今後の課題
論文検索を初版ガイドラインに引き続いて2002年9月より約5年間について行い,抽出された論文をもとに改訂を行った.新しい研究結果としては,疫学では遺伝的要因の研究,病態ではヘルニアの自然退縮機序,手術的治療では内視鏡下手術,予後では保存的治療と手術的治療の予後の比較についてなどがみられた.改訂に際し,以下の3つのクリニカルクエスチョンが新設された.
1. | 腰椎椎間板ヘルニアの発症に遺伝的背景はあるか |
2. | 腰椎椎間板ヘルニア退縮の機序は何か |
3. | 顕微鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術,内視鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術と通常のヘルニア摘出術の間に,術後結果に関して有意差が存在するか |
さらに初版ガイドラインに対するアンケート調査で記載を要望する意見が多くみられた外側型腰椎椎間板ヘルニアについては,エビデンスのある論文が少なくクリニカルクエスチョンを設けることはできなかったが,診断の過程で重要であるとの判断から解説的な記述を掲載することとした.
また腰椎椎間板ヘルニアに伴う馬尾症候群に対する早期治療の必要性については新規論文を加えて一部修正した.保存的治療と手術的治療の比較については,近年,多施設前向き観察研究の結果が報告されているが,結果の解析方法が椎間板ヘルニアの予後を評価するには適切でないと判断される点などもあり,限定的な結論として解釈した.近年発達した内視鏡下手術についてはRCTの結果が不十分であり,客観的な治療効果の比較には今後の研究を待たねばならない.
多くの医師にとって有用な診療ガイドラインであることを目指して作成したが,結論を導くには十分な結果の得られていない命題もあり,概説として説明した部分も少なくない.さらに今後も新しい文献を取り入れてガイドラインを改訂していく必要がある.最後に,本診療ガイドラインはあくまでも診断や治療における指針であり,個々の患者の事例に短絡的に当てはめて診療の実践内容を否定するための材料として使用してはならないことを強調したい.