(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン

 
第5章 予 後

 


1 腰椎椎間板ヘルニア患者のなかでどの程度の患者が手術に至るか

要 約
【Grade C】
強い症状を呈するか病状が長期に及ぶ腰椎椎間板ヘルニア患者群において、手術に至るのは10〜30%程度である。

背景・目的
ヘルニア患者のなかでどの程度の割合の患者が手術に至る可能性があるかを知ることは、発症直後の患者に対して病状を説明する際に有益である。

解 説
腰椎椎間板ヘルニアでは多くの症例が自然経過ないしは保存療法だけで改善を示すが、不幸にして手術に至る症例も認められる。 椎間板ヘルニアに対して手術を受けた患者に関する各国の統計をみると、米国では10万人中45〜90人、フィンランドでは35人、スウェーデンでは20人、英国では10人と報告されている。 しかしながら、ヘルニア患者の全体数の統計は認められないので、ヘルニア患者のなかでどの程度の患者が手術に至るのか正確にはわからない。
腰椎椎間板ヘルニア患者のなかでどの程度の割合で手術が選択されることになるかを知るためには、徹底的に保存療法を行ったシリーズで手術に至った患者の割合や、RCTで保存療法に割り当てられた患者のなかで手術に至った患者の割合が参考になる。
徹底的に保存療法を施行した報告(DF02978, EV level 5)によれば、58例中6例(10.3%)は耐えがたい疼痛の持続により手術を選択せざるを得なかったとしており、この数字が手術療法を選択せざるを得ない最低の数字と考えられる。 別の報告によれば、280人の椎間板ヘルニア患者のなかで確実に手術適応とされた患者は67例(23.9%)であったと報告している。 さらにこの報告では、確実に手術適応があるわけではないと判断された中間的な患者126人を手術療法と保存療法にランダムに振り分けているが、保存療法が選択された66人中17人(25.8%)が疼痛のために1年以内に手術になったと報告(DF04151, EV level 2)しており、先の確実に手術適応とされた患者と加えると全体では30%が1年以内に手術に至った患者ということになる。 したがって、徹底的に保存療法を行った場合でも10%程度の患者は手術をせざるを得なくなり、全体でみると30%程度の患者は手術に至る可能性があるということになる。
しかしながら、これらの報告はほとんどが紹介患者を対象にしたものであるため、ある程度以上の強い症状を呈している患者、ないしは病状が長期に及んだ患者群における頻度として捉えるべきであり、腰椎椎間板ヘルニア患者のなかで手術に至らざるを得ない割合は実際にはこの数字よりもかなり低いものであると推察される。

文 献
1) DF02978 Saal JA, Saal JS:Nonoperative treatment of herniated lumbar intervertebral disc with radiculopathy. An outcome study. Spine 14:431-437, 1989
2) DF04151 Weber H:Lumbar disc herniation. A controlled, prospective study with ten years of observation. Spine 8:131-140, 1983

 

 
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