(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン

 
第3章 診 断

 


8 腰椎椎間板ヘルニアと診断された患者において、障害神経根の同定のために、電気生理学的検査は必要か? もし、必要であればいかなる症例か

推 奨
【Grade B】
電気生理学的検査はヘルニアの診断のためには、必ずしも必要な検査ではない。しかし、障害神経根の同定や、術後の神経機能の評価には有用な検査法である。

背景・目的
脊椎・脊髄疾患の診断には、筋電図(EMG)、潜時(lateny)の測定、脊髄誘発電位(evoked potential)をはじめとして各種の電気生理学的検査が行われる。 しかし、その位置付け・必要性に関しては一致した見解がない。腰椎椎間板ヘルニアの診断に電気生理学的検査は必要か?  また、ヘルニアの診断学のなかでその位置付けはいかなるものであるかを文献的に検討する。

解 説
ヘルニア自体の診断に関して電気生理学的検査の有用性を検討した論文はない。 報告の多くは、ヘルニアと診断された後の、障害神経根の同定や障害程度の評価に関するものであり、概ね有用であるとしている。
ヘルニア患者85人とコントロール群43人の比較臨床試験では、体表面導出腰仙部誘発電位が神経根機能と障害神経根を同定するうえで有用であるとした(DJ00435, EV level 5)。 ヘルニア患者40人と健常人50人に関してdermatomal somatosensory evoked potentials(DSSEPs)を施行し、その有用性を検討した研究で、障害神経根の同定と障害程度の評価に有用であったとされた(DJ01224, EV level 9)。 ヘルニア患者90人に関して、筋電図学的にF波の異常を観察した研究で、F波の異常出現率は全体の約70%であり、術後の経時的観察は、術後評価の指標となることを報告した(DF03624, EV level 5)。

文 献
1) DJ00435 大澤透:体表面導出誘発電位を用いた腰仙部神経根障害の電気生理学的機能評価に関する基礎的研究.京府医大誌107:1045-1063,1998
2) DJ01224 豊倉穣:腰仙部椎間板ヘルニア症例におけるF波の異常-パラメーターごとの検討と術後変化について.リハ医30:729-739,1993
3) DF03624 Machida M, Asai T, Sato K:New approach for diagnosis in herniated lumbosacral disc. Dermatomal somatosensory evoked potentials(DSSEPs). Spine 11:380-384, 1986

 

 
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