(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン
第3章 診 断
4 脊髄造影は、腰椎椎間板ヘルニアの診断に必要か
推 奨
【Grade B】
脊髄造影は、腰椎椎間板ヘルニアの診断には必ずしも必要な検査でない。MRIやCTを使用すれば、省略可能な場合がある。
【Grade B】
脊髄造影は、腰椎椎間板ヘルニアの診断には必ずしも必要な検査でない。MRIやCTを使用すれば、省略可能な場合がある。
背景・目的
脊髄造影は、腰椎椎間板ヘルニアの診断において従来からゴールデンスタンダードの検査法であった。 しかし、近年CTはもとよりMRIの導入が進み、ヘルニアの診断に活用されている。脊髄造影の場合、診断精度の観点以外に、被曝の問題は避けて通れない問題でもある。 ヘルニアの診断に、脊髄造影は必須の検査法であるかを検討した。
解 説
手術により確診したヘルニア患者393人のコホート研究では、脊髄造影の高位診断accuracyは、90.8%と高率であることを報告した(DF03789, EV level 5)。 しかし、他の検査法と比べ、その診断精度には疑問を指摘する報告もある。
ヘルニア患者80人に脊髄造影、単純CT、MRIの3つの検査を施行し、それぞれの診断意義を検討した研究によれば、診断情報が多かった順から、CT、MRI、脊髄造影であり、ヘルニアが疑われた患者の第一選択の検査はCTもしくはMRIであると結論した(DF01574, EV level 5)。 さらに、143例のヘルニア症例を対象とした研究では、単椎間のヘルニアで臨床症状に矛盾がなければ、脊髄造影は省略できるとしている(DJ00818, EV level 5)。
CTやMRIに比べ、脊髄造影の診断的有用性は低いという報告は多い。 ヘルニア患者180人において、MRI、脊髄造影、CTMを術中所見と比較し、それらの診断精度を比較した研究では、術中所見との一致率は、それぞれMRI 96%、脊髄造影81%、CTM 57%であり、脊髄造影とCTMを総合して判断すると一致率は84%であったとしている。 この研究で、各検査法のsensitivityとspecificityはそれぞれ、MRIで96%、97%、CTMで49%、74%、脊髄造影で79%、81%であった(DF01792, EV level 6)。
ヘルニア患者51人に関して、脊髄造影と単純CTを比較した比較臨床試験では、sensitivityはCTで97%、脊髄造影で88%であるとした(DF02779, EV level 5)。 脊髄造影と低磁場MRI(0.15テスラ)の有用性を比較した同様の研究では、ヘルニアを確診できたのがMRIで95%、脊髄造影で87%であったとしている(DF03090, EV level 5)。
文 献
1) | DF03789 | Kortelainen P, Puranen J, Koivisto E et al:Symptoms and signs of sciatica and their relation to the localization of the lumbar disc herniation. Spine 10:88-92, 1985 |
2) | DF01574 | Albeck MJ, Hilden J, Kjaer L et al:A controlled comparison of myelography, computed tomography, and magnetic resonance imaging in clinically suspected lumbar disc herniation. Spine 20:443-448, 1995 |
3) | DJ00818 | 宮下裕芳,小林康一,緑川剛:CT/MRIによる腰椎椎間板ヘルニアの責任椎間の診断-脊髄造影術を省略する可能性.厚年病年報:2117-2123,1995 |
4) | DF01792 | Janssen ME, Bertrand SL, Joe C et al:Lumbar herniated disk disease:Comparison of MRI, myelography, and post-myelographic CT scan with surgical findings. Orthopedics 17:121-127, 1994 |
5) | DF02779 | Fagerlund MK, Thelander UE:Comparison of myelography and computed tomography in establishing lumbar disc herniation. Acta Radiol 30:241-246, 1989 |
6) | DF03090 | Szypryt EP, Twining P, Wilde GP et al:Diagnosis of lumbar disc protrusion. A comparison between magnetic resonance imaging and radiculography. J Bone Joint Surg 70B:717-722, 1988 |