(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン

 
第2章 病 態

 


4 ヘルニアの大きさは症状の程度に関連するか

要 約
【Grade C】
椎間板ヘルニアが大きいものほど下肢痛が強くなり、神経症状は重症となる傾向はあるが、統計学的に有意とはいえない。

背景・目的
CTやMRIにより椎間板ヘルニアの大きさ、局在を比較することが容易になった。
ここではヘルニアの大きさや局在が椎間板ヘルニアの症状の重症度と関連するかについて検討する。

解 説
脊柱管に対する椎間板ヘルニアの大きさの比率を計測する方法には、CTを用いて面積比、横径×前後径の積の比および前後径の比を用いる3つの方法があり、いずれの計測値も坐骨神経痛の程度との間によい相関が認められることが示された。 また横径×前後径の積の比は実測面積比によく相関し、簡便でよい指標になることが報告されている(DF01855, EV level 6)。 椎間板ヘルニアの保存療法例30例の経過から、脊柱管に対する椎間板ヘルニアの大きさの比率と坐骨神経痛の改善度によい相関がみられ、保存療法の効果の指標になることを示す報告がある(DF02583, EV level 7)。 また60歳以下の椎間板ヘルニア298例の調査結果から、ヘルニアの占拠率が大きくなるほど筋力低下が強くなり、SLRの角度が小さくなるとし、占拠率が50%を超えると筋力低下の発現率は80%になるとする報告もある(DJ00531, EV level 9)。 一方、単椎間発生の椎間板ヘルニア93例の検討では、知覚障害と膀胱直腸障害はヘルニアの大きさに影響を受け、膀胱直腸障害は中心性で硬膜管面積が小さいものに多い傾向があるが、筋力低下やJOAスコアとヘルニアの大きさとの間には有意な相関は認められず、SLRテストはヘルニア腫瘤の大きさよりも神経根との位置や脊柱管形態との関連が指摘されている(DJ00421, EV level 9)。
椎間板ヘルニアのタイプによって比較すると、noncontained type(extruded/ sequestered herniation)はcontained type(prolapse/forcal protrusion)に比べてSLRテストの陽性率や障害神経根領域の運動・知覚障害がより高度であると報告されている(DF01268 , EV level 5)。

文 献
1) DF01855 Thelander U, Fagerlund M, Friberg S et al:Describing the size of lumbar disc herniations using computed tomography. A comparison of different size index calculations and their relation to sciatica. Spine 19:1979-1984, 1994
2) DF02583 Fagerlund MK, Thelander U, Friberg S et al:Size of lumbar disc hernias measured using computed tomography and related to sciatic symptoms. Acta Radiol 31:555-558, 1990
3) DJ00531 橘田雅美,白井康正,渡邊誠ほか:腰椎椎間板ヘルニアのMRI所見と臨床所見との相関.日腰痛研会誌4:75-80,1998
4) DJ00421 石本勝彦,井口哲弘,栗原章ほか:腰椎椎間板ヘルニアにおけるヘルニア腫瘤の三次元解析と臨床症状との関連.臨整外34:1197-1203,1999
5) DF01268 Jonsson B, Stromqvist B:Clinical appearance of contained and noncontained lumbar disc herniation. J Spinal Disord 9:32-38, 1996

 

 
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