(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン

 
第2章 病 態

 


2 若年性椎間板ヘルニアは青壮年と相違があるか

要 約
【Grade C】
若年者の椎間板ヘルニアではSLRテストが強陽性を示す傾向があり、組織学的には椎間板ヘルニアに椎体骨端核の離解を伴った症例がしばしば認められる。また若年性椎間板ヘルニアの発症には椎間関節の非対称性が関与する可能性がある。

背景・目的
若年性椎間板ヘルニアについては腰椎の前屈制限、SLRテストの陽性率が高い、成人に比べて神経学的所見が少ない、椎体終板の損傷を伴うことが多いなどの特徴が知られている。 ここでは若年性椎間板ヘルニアの臨床症状や組織学的特徴について、およびヘルニアの発生機序に関与する脊椎の解剖学的な先天性要因について検討する。

解 説
若年者の椎間板ヘルニアの臨床症状の特徴としては、19歳以下の25例の報告では、すべての症例にSLRテストが強陽性であったことを挙げ、神経学的所見には特徴的な点はみられないとし(DF03969, EV level 7)、文献上の症例を含めて15歳以下の50例をまとめた報告では、SLRテストの強陽性に加えて、腰椎前弯の減少、側弯、腰背筋の緊張を伴った腰痛と下肢痛およびこれらに基づく歩行異常が特徴であるとしている(DJ10003 , EV level 7)。
椎間板ヘルニアの組織については軟骨板を伴って脱出した症例の報告がみられ、17歳以下の40例の手術所見をまとめた論文には11例28%に椎体骨端核の離解を伴っていたと報告されており、若年者の椎間板ヘルニアの1つの特徴であると述べている(DJ02210, EV level 6)。
発生機序に関与する脊椎の解剖学的な先天性要因について、20歳以下の椎間板ヘルニア手術例101例の分析を行った報告においては、画像所見では23例に脊椎の変形があり、椎間関節の左右不同12例、二分脊椎8例などがみられたと報告している(DF02424, EV level 7)。 また20歳以下の若年者椎間板ヘルニア25例と成人椎間板ヘルニア(30〜49歳)33例について、椎間関節の左右不同性をCTを用いて比較した報告では、若年者では41%と成人8%の5倍の頻度で左右不同性が認められたとし、脊椎形成異常が若年性椎間板ヘルニアの発症に関与する可能性が指摘されている(DF01113, EV level 6)。

文 献
1) DF03969 Epstein JA, Epstein NE, Marc J et al:Lumbar intervertebral disk herniation in teenage children:Recognition and management of associated anomalies. Spine 9:427-432, 1984
2) DJ10003 辻陽雄:10歳代の腰椎椎間板ヘルニア-とくに若年性ヘルニアの臨床と問題点.臨整外12:945-958,1977
3) DJ02210 後藤英隆:Ring apophysisの後方離解を伴った若年者腰部椎間板ヘルニアの検討.整形外科38:171-178,1987
4) DF02424 Savini R, Martucci E, Nardi S et al:The herniated lumbar intervertebral disc in children and adolescents. Long-term follow-up of 101 cases treated by surgery. Ital J Orthop Traumatol 17:505-511, 1991
5) DF01113 Ishihara H, Matsui H, Osada R et al:Facet joint asymmetry as a radiologic feature of lumbar intervertebral disc herniation in children and adolescents. Spine 22:2001-2004, 1997

 

 
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