(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン
第1章 疫学・自然経過
5 椎間板ヘルニアはどのくらいの割合で自然消退するか
要 約
【Grade I】
ヘルニア形態による差に関する研究はあるが、質の高いコホート研究は今のところ認められず、その割合を述べることはできない。
【Grade I】
ヘルニア形態による差に関する研究はあるが、質の高いコホート研究は今のところ認められず、その割合を述べることはできない。
背景・目的
椎間板ヘルニアは自然消退することが知られている。自然消退するヘルニアの割合について検討する。
解 説
保存療法を行った椎間板ヘルニアによる片側の下肢痛を示した77(男48、女29)例、平均年齢41(18〜86)歳を対象にした報告がある。 このなかでヘルニアを3つのタイプに分類している(MRI T1矢状断にて、Type 1:disc後方のlow signal areaが連続している、Type 2:disc後方のlow signal areaが途絶している、Type 3:Type 2かつヘルニア塊がdisc levelを越えている)。 自然縮小の割合は、Type 1:0/14(0%)、Type 2:7/27(26%)、Type 3:28/36(77.8%)、計35/77(45.5%)であり、ヘルニアの消退はmigrationしているType 3のものに多くみられた(DF01361 , EV level 6)。
平均4.3ヵ月の罹病期間を有する坐骨神経痛患者165(男114、女51)例を対象にした報告では、herniationあるいはsequestrationと評価された84例中64例(76%)にヘルニアの縮小あるいは完全消失を認めた。 bulgeと評価された22例中18例(82%)は変化はなかった。 結論として、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛患者の多くは、保存療法でヘルニアの縮小による症状の改善をみるとした(DF02348, EV level 6)。
以上の報告から、遊離脱出した椎間板ヘルニアの多くは自然消退が期待でき、膨隆型では自然消退する可能性は比較的少ないといえる。 しかし、以上の報告は限定された一群の結果であり、今のところ自然消退する割合についての質の高い詳細な報告はなく、ヘルニアの自然消退する割合を述べることはできない。
文 献
1) | DF01361 | Komori H, Shinomiya K, Nakai O et al:The natural history of herniated nucleus pulposus with radiculopathy. Spine 21:225-229, 1996 |
2) | DF02348 | Bush K, Cowan N, Katz DE et al:The natural history of sciatica associated with disc pathology:A prospective study with clinical and independent radiologic follow-up. Spine 17:1205-1212, 1992 |