(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第8章 大腿骨頚部/転子部骨折の周術期管理
8.6.術後全身管理
8.6.術後全身管理
■ Clinical Question 14
精神面の管理
解説
せん妄は術前よりみられ,術後に増加する.男性,低酸素血症,周術期の血圧の低下,電解質異常,感染の合併,薬剤,代謝異常,脳血流量低下などとの関連が指摘されている.血圧の低下を防止し,電解質レベルを正常範囲内で維持するよう努め,術後に酸素投与を行うことが重要である.
せん妄は術後のリハビリテーションを妨げ,ADL獲得の障害となることが多いため,その予防に努めるとともに,併発した場合には,専門家の対応を受けることが勧められる.
せん妄は術後のリハビリテーションを妨げ,ADL獲得の障害となることが多いため,その予防に努めるとともに,併発した場合には,専門家の対応を受けることが勧められる.
エビデンス
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systematic reviewにおいて,せん妄の原因の危険因子(電解質異常,感染,薬剤性,代謝異常,脳血流量低下)検索が重要で電解質レベルは正常範囲内で維持しなければならない(F1F02052, EV level I-2). |
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65歳以上の大腿骨近位部骨折患者126例に対して介入群(術前および術後に老人病学者による診察)と対照群の2群で比較検討し,介入群でせん妄発生の減少がみられた[relative risk 0.64(95%Cl 0.37〜0.98)].せん妄出現時期・入院期間に有意差はみられなかった(F1F00628, EV level II-1). |
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65歳以上の大腿骨近位部骨折患者452例に対する精神科リエゾン治療によって入院期間短縮,医療費の削減効果があった(F1F05077, EV level III-3). |
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大腿骨頚部骨折患者49例にせん妄予防のための看護と医療の介入プログラムを行ったところ,術後のせん妄の発生が過去の報告に比べて減少した(F1F01962, EV level III-3). |
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65歳以上の大腿骨頚部骨折患者101例の調査で,30%の症例は入院時あるいは術前すでにせん妄があり,19%の症例は術後にせん妄が発生した.術後せん妄には性差(男性に多い)と周術期の血圧の低下が関係している(F1F00633, EV level III-1). |
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大腿骨近位部骨折手術患者22例中21例に術後何らかの原因により低酸素血症が生じ,精神錯乱状態の原因となる可能性が示唆され,これらの患者には酸素飽和度が正常になるまで鼻腔カテーテルにより術後2L/分で酸素を補給しなければならなかった(F1F04468, EV level IV). |
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大腿骨頚部骨折患者50例とTHA患者50例の100例を検討し,術後の酸素濃度低下とせん妄の発生に関連性を認めた.術後,何らかの原因で低酸素血症をきたすが酸素の投与で改善し,せん妄の発生が抑えられた(F1F01065, EV level IV). |
文献