(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第8章 大腿骨頚部/転子部骨折の周術期管理
8.6.術後全身管理
8.6.術後全身管理
■ Clinical Question 13
栄養状態の改善は有効か
推奨
【Grade B】
栄養介入により大腿骨近位部骨折患者の死亡率の低下・血中蛋白質量の回復・リハビリテーション期間の短縮が期待できる.
サイエンティフィックステートメント
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60歳以上の大腿骨近位部骨折患者に対する経口的栄養介入によって合併症の発生率および死亡率を低下させたとする中等度レベルのエビデンスがある(EV level II-1).さらに,入院期間も短縮されたとする中等度レベルのエビデンスがある(EV level II-1). |
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大腿骨頚部骨折患者に対する経管栄養介入により術後の血中蛋白質量の回復が促進されたとする中等度レベルのエビデンスがある(EV level II-1).大腿骨近位部骨折患者に経口的栄養介入を行うことでリハビリテーション期間短縮の効果があったとする中等度レベルのエビデンスがある(EV level II-1). |
エビデンス
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栄養補充療法群:受傷後1〜3日/経静脈栄養[vitrimix® 1,000mL/日,1,000kcal相当:250mLのintralipid A+750mLのビタミンA-glucose],受傷後4〜7日/経口投与による栄養補給[fortimel® 200mL×2/日,400kcal相当:100kcal/100mL,10gの蛋白,10.3gの炭水化物,2.1gの脂肪,鉱物,ビタミンを含有]と対照群の2群をdouble-blind法で割付し検討を行った結果,高齢の大腿骨頚部骨折患者においてバランスのとれた栄養補充療法は,骨折に関連した合併症の発生を減少させ,術後120日における死亡率を低下した(F2F01058, EV level II-1). |
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大腿骨頚部骨折に対してTHAおよび骨接合術を実施した100例の患者に対する栄養介入群(入院中の高カロリーで高蛋白な食事と退院後の栄養指導)と対照群との比較で1年後の死亡率に差がなかった(F1F00916, EV level II-1). |
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60歳以上の大腿骨近位部骨折患者59例を栄養介入群(病院食に経口的総合栄養補給剤追加)と対照群の2群で比較,栄養介入群において入院期間が短縮,合併症発生および死亡率が有意に減少した(F1F05619, EV level II-1). |
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骨粗鬆症が原因で骨折し,受傷2週間以内の大腿骨近位部骨折患者82例の患者に対する栄養介入群(経口的総合栄養補給剤を週5日,6ヵ月間投与)と対照群との比較で,栄養介入群に血液中IGF-I濃度増加,大腿骨頚部骨密度低下の抑制,リハビリテーション期間短縮の効果があった(F1F02051, EV level II-1). |
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64歳以上の大腿骨頚部/転子部骨折患者18例に対する栄養介入群(術後経鼻チューブから夜間持続経管栄養を15日間)と対照群との比較で,栄養介入群において6ヵ月後の死亡率が有意に低下した(F1F02258, EV level III-1). |
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大腿骨頚部骨折で入院した高齢女性患者744例のうち,栄養状態が標準偏差で—1から—2に分類される群と標準偏差が—2以下に分類される群の合計122例に対して無作為に経管栄養を行った結果,術後の血中蛋白質量の回復が促進された(F2F00793, EV level II-1). |
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大腿骨頚部骨折の患者の予後が,栄養状態で変化するかを検討する目的で,318例を通常の看護を受けた群とdietetic assistance(DA)に留意した食事をした群に分けて検討した.DA群では入院中の術後死亡率(4.1% vs.10.1%,p =0.048),術後4ヵ月での死亡率(13.1% vs.22.9%,p =0.036)がともに有意に低下しており,食事を改善することで,術後に死亡する危険を減らすことができた(F2F03928, EV level II-1). |
文献