(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第8章 大腿骨頚部/転子部骨折の周術期管理
8.4.感染
8.4.感染
■ Clinical Question 10
ドレーン使用は有効か
推奨
【Grade C】
ドレーン使用は感染率・創傷治癒に有効である.
サイエンティフィックステートメント
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ドレーン使用によりHbの低下,輸血量,血腫量に有意差はないが,感染率,創治癒はドレーン留置したほうが良いとする中等度レベルのエビデンスがある(EV level II-1). |
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ドレーン使用が創治癒に有意差がなかったとする中等度レベルのエビデンスがある(EV level II-1). |
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ドレーン使用によって血腫量に有意差は認めなかったとする低レベルのエビデンスがある(EV level III-3). |
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ドレーン使用による創感染,血腫,創離開,再手術の発症率に有意差は認めなかった.ドレーンを使用した患者群に輸血を必要とする頻度が高かったとする低レベルのエビデンスがある(EV level III-4). |
エビデンス
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大腿骨近位部骨折177例(DHSによる骨接合術・人工骨頭置換術)をドレーン留置群(86例),ドレーン非留置群(91例)の2群間で比較した.Hbの低下,輸血量,血腫量に有意差はなかった.感染率:ドレーン留置群7%(6/86)ドレーン非留置群13.2%(12/91),ASEPSIS wound score:ドレーン留置群3.19±6.32,ドレーン非留置群4.13±6.56と有意差を認めた(F1F03764, EV level II-1). |
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大腿骨頚部骨折で手術した70例でドレーン留置と感染の関連性を検討した.ドレーン留置35例,非留置35例の2群間で,術後7日の炎症状態に差は認めなかった(F1F05522, EV level II-1). |
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大腿骨近位部骨折でDHS,人工骨頭置換術を実施した171例のうち評価可能であった140例について,ドレーンあり群・なし群の2群間で術後血腫量を超音波を用いて比較検討した.ドレーンあり群66例,なし群74例の術後2日(ドレーン抜去前)の血腫量に有意差は認めなかった(F1F04131, EV level III-3). |
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5,464人の患者,5,697件の手術における術創を対象とした36件の臨床試験(人工股関節置換術,人工膝関節置換術,肩関節手術,大腿骨近位部骨折手術,脊椎手術,十字靱帯再建術,関節包を切開する半月板切除術および骨折固定手術を対象)のデータを統合した結果では,術後の創感染,血腫,創離開,再手術の発止率に吸引ドレーン使用群と非使用群の間に統計学的に有意な差は認めなかった.ドレーンを使用した患者群に輸血を必要とする頻度が高かった.ドレーンを使用しなかった患者では,術創のドレッシングをしっかりとする必要が多く,また,皮下出血斑を呈することが多かった(F2F03844, EV level III-4). |
文献