(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)

 
 
第7章 大腿骨転子部骨折の治療
7.6.内固定材料抜去

■ Clinical Question 14
内固定材料抜去の適応

推奨

【Grade Id】
無症状の高齢者では,内固定材料は抜去しないことを推奨する.

【Grade Ib】
疼痛などにより内固定材料抜去の必要がある場合には,内固定材料抜去後に一定期間の免荷を推奨する.


サイエンティフィックステートメント

dot short femoral nail(Gammaタイプ)抜釘により大腿骨頚部骨折のリスクが高まるとする低いレベルのエビデンスがある(EV level IV).
dot sliding hip screw(CHSタイプ)の抜釘後6週間免荷した症例では,同側再骨折の危険性は高まらなかったとする低いレベルのエビデンスがある(EV level IV).


エビデンス

dot 転子部骨折に対しGammaネイル固定を行った1,334例中37例に抜釘を行った.そのうち9例は疼痛のためであった.この9例中3例に術後早期に全荷重可能となった時期に頚部骨折を生じた.実験では抜釘による大腿骨空洞化の骨強度に対する力学的影響を調査した.新鮮屍体大腿骨18対を用い,Gammaネイルで固定後除去,DHSで固定後除去,掘削のみの3群に分け,それぞれ徐々に周期的荷重を増加してかけ,対側をコントロールとして用いて比較した.3群ともコントロールに比較して少ない荷重で骨折した.DHS除去後の骨はGammaネイル除去後や掘削のみの骨に比較して,骨折を生じるにはより大きい荷重を必要とした.Gammaネイルのような大きなインプラントの抜釘は,大腿骨頚部骨折をきたす可能性がある.このタイプのインプラントは骨折治癒後も,深部感染・慢性感染の場合以外は残すことを推奨する(F1F00650, EV level IV).
dot 大腿骨近位部骨折手術後,単純エックス線写真上骨癒合と判定し,内固定材料を抜去した54例を対象(Richard screw 31例,AO screw 23例,その他 3例).30例は頚部骨折,24例は転子部骨折.内固定から抜釘までの期間は平均3.7年(0.8から5.3年),抜釘後6週間免荷した.再骨折の有無をみた経過観察期間は内固定抜去から調査時までまたは死亡,転居,2度目の大腿骨近位部骨折までとし,平均5年であった.同側の骨折はなかった.11例に反対側の大腿骨近位部骨折がみられた.エックス線上骨癒合した大腿骨頚部骨折で内固定具の抜釘を正当化する徴候が認められたなら,抜釘しても,同側再骨折の危険性が高まるわけではない(F1F05540, EV level IV).


文献

1) F1F00650 Kukla C, Pichl W, Prokesch R et al:Femoral neck fracture after removal of the standard Gamma interlocking nail:a cadaveric study to determine factors influencing the biomechanical properties of the proximal femur. J Biomech 2001;34:1519-1526
2) F1F05540 Wand JS:Risk of refracture after removing hip fixation. J Bone Joint Surg 1990;72-B:148-149



 

 
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