(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第7章 大腿骨転子部骨折の治療
7.5.骨接合術の合併症
7.5.骨接合術の合併症
■ Clinical Question 13
骨頭壊死の発生率
解説
骨頭壊死の発生率は0.3〜1.2%である(ここでいう骨頭壊死とはエックス線単純写真で明らかな圧潰を認めた,いわゆるlate segmental collapseである).
エビデンス
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大腿骨転子部骨折1,373例中,1年以上経過観察可能であった920例中8例[男性:2例,女性:6例,平均年齢:68歳(52〜78歳)]に大腿骨頭壊死(0.87%)が生じていた.5例はSHSで,3例がshort femoral nailで固定されており,全例,解剖学的に良好な位置に整復され,満足する位置にインプラントが設置されていた.喫煙やアルコール,糖尿病,ステロイド歴など危険因子を持つ症例はなく,壊死は4ヵ月から4年の間に発生していた.安定型が2例,不安定型が5例,頚基部骨折が1例であった.受傷時,手術時の血管損傷が原因であれば,早い時期に壊死が生じるはずであることから,軽度の損傷あるいは特発性骨頭壊死との関連も考えられた.2例は抜釘後に生じていた.全例人工関節置換術の再手術を行った(F2F02579, EV level IV). |
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不安定性大腿骨転子間骨折604例に対してGammaネイルを施行後に,大腿骨頭壊死をきたした7例(1.16%).経過観察期間は2〜8年(平均6年).整復位の保持および内固定材料の異常はなくこれらが原因ではなかった.年齢の影響は不明.受傷原因が7例中6例はhigh energy損傷であったことから,受傷時に骨頭への血行が障害された可能性がある.また,2例に大腿骨頚基部骨折を伴っていたため,これが一因とも考察された.また,手術中のリーミング時における骨頭への回旋強制が骨頭への血行障害を惹起し,これによって骨頭壊死が生じた可能性が示唆された.3例にアルコールの嗜好があり,この影響もある(F1F00424, EV level IV). |
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転子間骨折術後の大腿骨頭無腐性壊死の発症率は約0.55%であった.症状が現れるまでの平均期間は骨折後16ヵ月(1.5ヵ月〜8年).骨折から最初に単純エックス線写真上の変化が現れるまでの平均期間は21ヵ月(2.5ヵ月〜10年).大腿骨頭壊死は転子間骨折後の合併症としては一般的ではなく,その病因は明らかでない.転子間骨折後に疼痛が増強した患者において,骨壊死のリスクファクター(糖尿病,肥満,術後静脈血栓症,高コレステロール血症)があったり,近位転子間に骨折線が入り,大腿骨頚部基部の血管損傷のおそれのある症例については特別に考慮するべきである(F1F01808, EV level IV). |
文献