(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第7章 大腿骨転子部骨折の治療
7.3.外科的治療の選択
7.3.外科的治療の選択
■ Clinical Question 7
初回手術における人工骨頭置換術の適応
推奨
【Grade C】
整復困難な不安定型転子部骨折では,人工骨頭置換術を行っても良い.
【Grade Id】
ただし,高度な技術をもった医師以外には勧められない.
解説
不安定型転子部骨折では人工骨頭置換術と骨接合術との間に明らかな手術成績の差はないが,転子部骨折に対する人工骨頭置換術は技術的難易度が高く,輸血の必要性も高まる.
サイエンティフィックステートメント
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不安定型骨折に対する人工骨頭置換術と骨接合術とを比較し,手術時間,創合併症,死亡率,歩行能力に差がなかったが,人工骨頭置換術では出血量,輸血量が多いという高いレベルのエビデンスがある(EV level I-1, EV level II-1). |
エビデンス
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70歳以上,新鮮不安定型転子部骨折90例に対するCHS47例と人工骨頭置換43例を比較し,手術時間,創合併症,死亡率,歩行能力に差はなかった.しかし輸血必要例は骨接合群57%に対し,人工骨頭群79%と有意差があった(p <0.05).CHS群では著しい骨折の転位や圧潰が11例(26%)に起こり,2例に再手術を必要とした.人工骨頭群では再手術を必要としたのは1例のみであった(F1F03753, EV level I-1). |
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75歳以上の不安定型転子部骨折58例に対するロングステム型セメント使用人工骨頭置換術29例とPFN使用骨接合術29例を比較し,股関節機能(Harris Hip Score,ADL score)に差はなかった.しかし,人工骨頭群のほうが,出血量,輸血量,輸血実施例は有意に多く,また手術時間も有意に長くなっていた(p =0.000).また,入院日数に差はなかったものの,治療費は人工骨頭のほうが高かった(F2F02015, EV level II-1). |
文献