(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第6章 大腿骨頚部骨折の治療
6.7.予後
6.7.予後
■ Clinical Question 26
生命予後
解説
1年以内の死亡率はわが国では10%前後,海外では10〜30%と報告されている.
生命予後に影響する因子には性(男性のほうが不良),年齢(高齢者ほど不良),受傷前の歩行能力(低い者ほど不良),認知症(有するほうが不良)などがある.
治療法別には人工骨頭置換術のほうが,骨接合術より死亡率が高い.セメント使用,非使用間での死亡率には有意差がない.
生命予後に影響する因子には性(男性のほうが不良),年齢(高齢者ほど不良),受傷前の歩行能力(低い者ほど不良),認知症(有するほうが不良)などがある.
治療法別には人工骨頭置換術のほうが,骨接合術より死亡率が高い.セメント使用,非使用間での死亡率には有意差がない.
エビデンス
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65歳以上の頚部転子部骨折450例の検討.1年未満の死亡率10.7%であった.予後関連因子は年齢,術前認知症,退院後世帯状況(同居,別居),術後歩行能力,術後合併症の有無であった(F1J00037, EV level IV). |
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65歳以上の頚部骨折201例の検討.多変量解析の結果,132例が死亡で生存曲線は最初の1年で80%まで低下し,その後は緩やかな低下であった.生命予後に対する重要因子は年齢,術後歩行能力であった(F1J00038, EV level IV). |
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人工骨頭(308例),骨接合術(630例)後の歩行能力を受傷前の歩行能力と年齢とで検討したところ,いずれも関連が強かった.手術例での死亡率は11.3%で術後1年未満,1〜5年,5年以上に分けての検討では,死亡率,歩行能力に差は認めなかった.人工骨頭は骨接合術より死亡率が高く,特に,セメント使用例が高かった.受傷前の歩行能力と死亡率に関連性を認めた(F1F04025, EV level II-2). |
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骨頭置換した93例を1,5年で評価.死亡率は1年21%,5年83.5%であった.年齢のみが術後機能に影響していた(F1F03208, EV level III-3). |
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転位型451例の検討.セメント使用/セメント非使用Bateman bipolarの比較では,死亡率に有意差なし(F1F03982, EV level III-3). |
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65歳以上の612例の検討.骨折後1年の死亡率は12.7%で男/女:2/1であった.死亡に関する因子は年齢(86歳以上),術後合併症などであった(F1F02834, EV level II-2). |
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大腿骨近位部骨折の治療を受けた60歳以上の患者463例中430例を調査した結果,59人(13.7%)が100日以内,107人(24.9%)が12ヵ月以内に死亡していた.男性の死亡率は女性に比べて術後100日後で1.7倍,1年後で1.8倍であった.また術後100日と1年において年齢と生存率に相関を認め,術後100日では年齢が10.2歳上がるごとに死亡率は2倍,1年後では14.1歳上がるごとに死亡率は2倍となっていた(F2F00393, EV level II-2). |
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転位のある大腿骨頚部骨折に対して人工骨頭置換術を施行した1,700例中1,186例を調査した結果,術後1年での死亡率は31.5%で,心合併症,認知症,年齢,褥瘡,性,ストレス潰瘍,肺炎,入院期間,手術待機時間が有意に影響があり,その他の因子は有意に影響を及ぼすとは言えなかった.認知症のある群での術後平均余命は1.1年であるのに対して,ない群では3.4年であった.手術に関係する因子で死亡率にもっとも影響があったのは手術待機時間であった(F2F01550, EV level IV). |
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受傷後5年以上経過した60歳以上の大腿骨近位部骨折患者534例(男性92例,女性342例,平均年齢82.1歳,頚部骨折188例,転子部骨折246例)を調査した結果,受傷後1年の生存率は91.9%,5年以上生存したものは45.6%.受傷後1年では実際の生存率と期待生存率には差がないが,3年目以降は有意に低下していた(F2J00262, EV level IV). |
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10,992例の大腿骨近位部骨折(頚部骨折:4,537例,転子部骨折:6,217例)の調査では,1年後の死亡率は10.1%であった(F2F02466, EV level II-2). |
文献