(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第6章 大腿骨頚部骨折の治療
6.7.予後
6.7.予後
■ Clinical Question 25
歩行能力はどの程度回復するか.また,歩行能力回復に影響を及ぼす因子は何か
解説
受傷後,適切な手術を行い,適切な後療法を行っても,すべての症例が受傷前の日常活動レベルに復帰できるわけではない.歩行能力回復に影響する主な因子は年齢,受傷前の歩行能力,認知症の程度である.退院後,自宅に帰った症例(なかでも同居症例)は施設入所例よりも機能予後が良い.
エビデンス
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転子部骨折262例,頚部骨折165例に,骨接合,人工骨頭,THAを施行をした.生命予後は多変量解析で骨折前ADL,EEG,ECG,Hasegawa scoreが影響していた.機能的予後は55.8%の例に受傷前およびそれ以上の歩行能力を得た(F1F04388, EV level IV). |
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65歳以上の頚部骨折450例の検討.術後1年の歩行能力関連因子は術前歩行能力,退院後世帯状況(同居,別居),認知症,年齢,手術法であった(F1J00037, EV level IV). |
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65歳以上の手術例308例の検討.歩行再獲得の障害因子は,年齢,性,受傷前住環境,受傷前歩行能,認知症,脳神経疾患,貧血であった(F1J00100, EV level IV). |
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平均年齢78歳の頚部骨折218例の検討,平均年齢78歳.骨接合47例,骨頭置換153例,保存療法18例であった.平均33.6ヵ月の観察では,歩行能力への影響は年齢,認知症,受傷前の歩行能力の順に大きかった.90.4%の症例が術前と同能力を再獲得した(F1J01020, EV level IV). |
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90歳以上の,術後1年以上経過した46例(頚部骨折13例,転子部骨折33例)を検討.歩行再獲得関連因子は認知症の程度であり,退院時自宅受け入れ例に歩行能力が高かった(F1J00402, EV level IV). |
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162例の後ろ向き調査結果.術後の認知症レベルと歩行レベルは有意に関連していた(F1F00942, EV level IV). |
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大腿近位部骨折に対して観血的治療を行った219例において,認知症の有無,過去1年間の転倒回数,歩行再獲得率を検討した.認知症群では歩行再獲得率は35.6%であったが,認知症なし群では歩行再獲得率は71%であり,認知症群に対して有意に高かった(p =0.0000026).過去1年間の転倒回数が1回以内群では歩行再獲得率は68.5%であったが,2回以上群では歩行再獲得率は56.1%で,1回以内群に対して有意に低下していた(F2J00915, EV level III-2). |
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手術治療を行った大腿骨近位部骨折患者を65〜79歳までの高齢者群,80歳以上の超高齢者群に分けて歩行再獲得率を調査した.退院時の歩行再獲得率は,認知症合併がない場合,高齢者群では76.4%,超高齢者群では54.7%で有意差を認めた.認知症を合併した場合は,歩行再獲得率は高齢者群で13.3%,超高齢者群で11.8%で有意差がなかった(F2J00954, EV level IV). |
文献