(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第6章 大腿骨頚部骨折の治療
6.6.人工骨頭置換術の合併症
6.6.人工骨頭置換術の合併症
■ Clinical Question 22
術中合併症の発生率
解説
術中に突然死の報告(0.075%)があり,その多くがセメント使用例である.セメント使用時に心拍出量の低下,血圧の低下,術中心停止例が報告されている.また,大腿骨近位部骨折(2.3%)が生じたとの報告もある.
エビデンス
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20例でセメント使用の骨頭置換術中の心拍出量を検討した.セメント使用前には有意な低下はなく,セメント使用中に心拍出量が33%低下し,1回拍出量が44%に低下した.セメント使用は心拍数,動脈圧に影響しない(F1F00676, EV level II-2). |
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股関節形成術をした38,488例(骨折以外の症例含む).術中突然死23例で全例セメント使用例.23例中21例は術前心臓血管病変の既往あり(F1F01615, EV level IV). |
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Bateman bipolar型88例(セメント非使用).平均77歳.術中大腿骨近位部骨折を2例,心不全を2例に認めた(F1F05446, EV level IV). |
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骨頭置換をした329例(セメント使用234例,セメント非使用95例)の検討.1例はセメント挿入時,血圧低下し植物状態となった(F1J00459, EV level IV). |
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大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭置換術134例中,6症例で重篤な呼吸・循環合併症が認められた.4症例では,骨セメント注入や人工骨頭脚打ち込み直後に高度低血圧,徐脈,心停止をきたし,1症例では人工骨頭を打ち込んだ30分後に呼吸不全の増悪を認め,1症例では手術終了後に狭心症を発症した(F2F02805, EV level IV). |
文献