(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第6章 大腿骨頚部骨折の治療
6.3.治療の選択
6.3.1.初期治療の選択
6.3.治療の選択
6.3.1.初期治療の選択
■ Clinical Question 10
人工物置換術を選択する場合,人工骨頭置換術とTHAのどちらを選択するか
推奨
【Grade A】
活動性が高い症例にはTHAを推奨する.
【Grade C】
全身状態が悪い症例や高齢で活動性が低い症例には人工骨頭置換術を推奨する.
解説
一期的THAと一期的人工骨頭置換術とを比較して,THAのほうが成績が良いとする海外からの報告があるが,systematic reviewでは両者の適応については「研究数が少なく不明である」と報告されている.また,THAのほうが手術侵襲は大きいので,対象患者の全身状態が悪い場合や,期待される余命が短い場合には,人工骨頭置換術を推奨する.
サイエンティフィックステートメント
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THAは人工骨頭置換術に比し,疼痛が少なく,可動性が良く,再置換率は低いが,両者の適応については研究数が少なく不明である(EV level II-1). |
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活動性が高く,転位型で認知症のない例にTHAの適応があるという中等度レベルのエビデンスがある(EV level II-I, EV level II-2). |
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THAはbipolar型人工骨頭置換術に比べ,合併症の発生率を上昇させずに股関節機能を改善させたという中等度レベルのエビデンスがある(EV level II-1). |
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THAの手術時間は有意に長いが,機能スコアはより良好である.これ以外の点では両群間の差はほとんどないという高いレベルのエビデンスがある.(EV level I-2). |
エビデンス
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高齢者166例を対象として,unipolar型(セメント使用,セメント非使用)とTHAを比較検討した.再置換率はTHA 2.2%,セメント使用7.9%,セメント非使用13%であった.死亡率はTHA 0%,骨頭群3.3%で有意差は認めなかった.高齢者で活動性が高い例ではTHAが有用で,高齢者で活動性が低い例では人工骨頭置換を勧める(F1F04799, EV level II-2). |
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65歳以上転位型185例に骨接合,unipolar型骨頭,bipolar型骨頭,THAを施行した.費用の比較では,術後2年での費用はTHAが最も少なかった(F1F00515, EV level III-2) |
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転位型大腿骨頚部骨折症例に対し,ランダムにbipolar型人工骨頭置換術とTHA を行い,その結果を検討した.4ヵ月後および1年後における股関節機能(Harris hip score)はTHA群のほうが有意に高かった(4ヵ月後p=0.011,1年後p<0.001).術後4ヵ月における合併症に関して,群間差は認められなかった.1年後までの死亡率についても群間差は認められなかった(p=0.697)(F2F02139, EV level II-1). |
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4件の臨床試験(総患者数415名)でセメント使用の人工骨頭置換術とTHAとが比較されていた.うち3件の臨床試験の結果では,THAの手術時間は有意に長かったが,機能スコアはより良好であった.これ以外の点では,4件の臨床試験はいずれも両群間の差はほとんどないという結果を示していた.2件の臨床試験(総患者数232名)でセメント非使用人工骨頭置換術とTHAとが比較されていた.いずれの臨床試験でもセメント非使用人工骨頭置換術はTHAより疼痛の点で劣っていた(F2F01131, EV level I-2) |
文献