(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第6章 大腿骨頚部骨折の治療
6.1.入院から手術までの管理と治療
6.1.入院から手術までの管理と治療
■ Clinical Question 2
術前牽引は行ったほうが良いか
推奨
【Grade D1】
術前の牽引をルーチンに行うことは推奨しない.
解説
術前直達牽引をルーチンに行うことは有用ではない.しかしながら,術前直達牽引の有用性に関するこれまでの検討は,早期手術の症例であり,待機手術を対象とした研究はない.したがって待機手術の場合に直達牽引が有効かどうかに関する研究はない.
サイエンティフィックステートメント
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早期手術の場合には,牽引の有効性なしとする高いレベルのエビデンスがある(EV level I-2, EV level II-1). |
エビデンス
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術前のルーチンな牽引(介達と直達)は疼痛,鎮痛薬の使用,整復の容易性,手術時間,偽関節の発生率に有意差は認めなかった.牽引の有効性はなかった(F1F00541, EV level I-2). |
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牽引をした例としなかった例との間に,疼痛,手術時の整復の容易性,手術時間に有意差は認められなかった.また鋼線牽引とスキントラクションの間にも有意差はなかった.唯一の違いは,鋼線牽引のほうがスキントラクションよりも痛みが強くコストがかかるということであった.牽引の有効性はなかった(F1F01099, EV level I-2). |
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大腿骨近位部骨折患者において,術前に皮膚牽引を実施した場合,実施しない場合に比べ,入院日の夕方と翌日の朝の疼痛を抑制したが,鎮痛薬使用量を減少させることはなかった(F2F01629, EV level II-1). |
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手術前の疼痛の軽減に関しても,手術時に骨折部を容易に整復できたかどうか,また良い整復が得られたかどうかに関しても,術前に牽引を行うことの有用性を示すエビデンスはなかった(F2F01130, EV level I-2). |
文献