(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)

 
 
第6章 大腿骨頚部骨折の治療

本章のまとめ
本骨折は転子部骨折に比較して骨癒合が障害されやすい.これは本骨折が関節内骨折であるため関節液が流入することや,骨折線が垂直方向になりやすく骨片間に剪断力が働き,骨片間に離開を生じることによる.また骨折によって大腿骨骨頭への血流が阻害されるため,骨頭の阻血を生じ,これも骨癒合障害の原因となると同時に,骨頭壊死やlate segmental collapse(LSC)続発の原因となる.
本骨折ではほとんどの症例で手術的治療が選択される.手術方法は骨接合術と人工物置換術とに分けられる.骨癒合率や骨頭壊死発生率は非転位型(Garden stage I,II)と転位型(Garden stage III,IV)とで差がある.一般に,非転位型では骨接合術を,転位型では人工物置換術(人工骨頭置換術)が行われることが多いが,その手術方法の選択にあたっては患者の年齢,身体活動性,全身状態を考慮する必要がある.骨接合術後には偽関節,骨頭壊死,LSCなどの合併症が生じ,LSCは術後長期間(1〜2年)経過した後に明らかとなることが多いため,経過観察が必要である.術前に偽関節,骨頭壊死,LSCの予測をするために,種々の検索法が検討されていて,その有用性が報告されている(「第6章CQ17参照」).しかしながら,診断精度が低かったり,侵襲的であったり,手技が煩雑であったりするため,現時点ではエックス線単純写真のみが術前ルーチンに行われている.合併症としては人工骨頭置換術後の脱臼,異所性骨化やインプラント周囲骨折などの合併症を生じることがある.
受傷後,適切な手術を行い,適切な後療法を行っても,すべての症例が受傷前の日常活動レベルへ復帰できるわけではない.身体機能(歩行能力)の予後には年齢,受傷前の歩行能力,認知症の程度が影響する.受傷後1年以内の死亡率は10〜30%である.

sum_dot 解説
コクランライブラリーのsystematic reviewでの用語に従って,「compression hip screw(CHS)」「dynamic hip screw(DHS)」などの,ラグスクリューとプレートより構成される大腿骨頚部/転子部骨折治療用の内固定材料をsliding hip screw(CHSタイプ)と総称する.


 

 
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