(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)

 
 
第5章 大腿骨頚部/転子部骨折の診断

■ Clinical Question 4
MRIと骨シンチグラフィーとではどちらのほうが有用か

推奨

【Grade A】
MRIのほうが有用である.


解説

MRIと骨シンチグラフィーとはともに不顕性骨折の診断に有用であるが,骨シンチグラフィーは陽性所見が出るまでに時間がかかり,早期診断には不向きである.また骨シンチグラフィーは侵襲的であり,撮影に時間を要するため,患者の負担が大きい.さらに偽陽性・偽陰性があり,精度も骨シンチグラフィーはMRIよりも劣る.

サイエンティフィックステートメント

dot MRIのほうが診断できる時期が早く,非侵襲的で,精度が高いという高いレベルのエビデンスがある(EV level C-Ib, EV level C-II).

エビデンス

dot 臨床的には股関節部骨折が疑われるものの,エックス線所見が陰性である62例の患者に,MRIと骨シンチグラフィーを両方とも行った.MRIは入院24時間以内に,骨シンチグラフィーは入院後72時間以内に行った.MRIで陰性所見の23例は骨シンチグラフィーでも同様に陰性であった.さらに,入院時エックス線写真上阻血性壊死が明らかな2例の患者は,MRIでも骨シンチグラフィーでも大腿骨頭の阻血性壊死の証拠を示したが,骨折はなかった.37例の患者ではMRI上骨折が明らかで,そのうち36例は初回の骨シンチグラフィーでも明らかであったが,1例の患者は入院後24時間での骨シンチグラフィーでは陰性であり,6日後の再骨シンチグラフィーでは陽性であった.MRIはoccult fractureの診断上,骨シンチグラフィーと同じくらい正確であった.MRIは15分未満で撮影できて,患者も耐えられる.MRIは股関節部のoccult fractureの早期診断を可能にし,確定的治療を促進して,入院期間を短縮するであろう(F1F04500, EV level C-Ib).
dot 転倒後股関節部痛を生じて入院した230例の高齢患者のうち,193例はエックス線学的に大腿骨頚部骨折が明らかになったが,残りの37例はエックス線写真で正常あるいは大転子骨折のみが証明された.これらの患者のすべてにMRIを行い,さらに,軟部組織の挫傷による偽陽性の結果を避けるために,転倒後少なくとも48時間以降に99mTc骨シンチグラフィーを行った.エックス線写真で正常な37例の患者のうちの8例は転位のない大腿骨頚部骨折が証明された.8例の骨折はMRIではすべて診断されたが,骨シンチグラフィーでは6例だけしかみつからなかった.残りの29例に大腿骨頚部骨折の証拠はなく,彼らのすべてが受傷後3ヵ月での再調査で無症状であった.大腿骨頚部骨折が疑われる患者の診断上,MRIは骨シンチグラフィーよりも正確で,非侵襲的で,早く実施できることが判明した(F1F04089, EV level C-II).

文献

1) F1F04500 Rizzo PF, Gould ES, Lyden JP et al:Diagnosis of occult fractures about the hip. Magnetic resonance imaging compared with bone-scanning. J Bone Joint Surg 1993;75-A:395-401
2) F1F04089 Evans PD, Wilson C, Lyons K:Comparison of MRI with bone scanning for suspected hip fracture in elderly patients. J Bone Joint Surg 1994;76-B:158-159



 

 
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