(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)

 
 
第4章 大腿骨頚部/転子部骨折の予防

■ Clinical Question 4
その他の予防法はあるか

推奨

【Grade A】
住環境改善,向精神薬漸減は転倒防止に有効である.


サイエンティフィックステートメント

dot 転倒歴のある対象への住環境改善,向精神薬漸減は転倒防止に有効であるとする高いレベルのエビデンスがある(EV level I-2).床の構造により骨折発生率を減少できる可能性を示す研究がみられたが,大腿骨頚部/転子部骨折を予防できるというエビデンスはまだない.

エビデンス

dot 高齢者(在宅,施設入所あるいは入院中)における転倒頻度減少のためにデザインされた介入の効果を評価するためのmeta-analysisでは,介入は有益のようである.効果のある介入は,筋力強化とバランス改善のプログラム(プロによる家庭での個別指導による):RR 0.80(95%CI 0.66〜0.98),太極拳:RR 0.51(95%CI 0.36〜0.73),家庭環境因子の評価と改善:RR 0.64(95%CI 0.49〜0.84),向精神薬中止:RR 0.34(95%CI 0.16〜0.74),多要因プログラム:選択条件をつけない在宅高齢者においてRR 0.73(95%CI 0.63〜0.86),転倒リスクをもつ高齢者においてRR 0.79(95%CI 0.67〜0.94).このように転倒予防介入は有効のようであり,現在活用できる.これらが転倒による外傷の予防に有効であるかについては,明確ではない.大腿骨頚部/転子部骨折予防のデータはない.予防された転倒当たりのコストは4つの介入策で確立されている(F1F10011, EV level I-2).
dot 予防的家庭訪問の効果について15のRCTをレビューし,身体機能,心理社会的機能,転倒,入院状況,死亡率を主要評価項目に解析した.6つの試験で3,100例について転倒数を測定しているが,2試験においてのみ介入群で転倒が減少した.全体として一定した結果が得られず,その意義については不明である(F1F10013, EV level I-2).
dot 床のタイプが股関節骨折の発生率に影響を及ぼすかどうかを34ケアホームの入所者を対象に検討.①カーペットのない木の床,②カーペットを敷いた木の床,③カーペットのないコンクリートの床,④カーペットを敷いたコンクリートの床,における転倒時の骨折発生率を2年間比較検討したところ,骨折発生数はカーペットを敷いた木の床が他のすべての床タイプを合わせたものより有意に少なかった(OR 1.78,95%CI 1.33〜2.35).カーペットを敷いた木の床は転倒時の骨折発生率が最も少なく,ケアホームにおいては床を変えることにより骨折を減少させることができるとの結論を得た.大腿骨頚部/転子部骨折には言及がない(F2F00183, EV level II-2).

文献

1) F1F10011 Gillespie LD, Gillespie WJ, Robertson MC et al:Interventions for preventing falls in elderly people. Cochrane Database Syst Rev 2001;3:CD000340
2) F1F10013 van Haastregt JC, Diederiks JP, van Rossum E et al:Effects of preventive home visits to elderly people living in the community:systematic review. BMJ 2000;320:754-758
3) F2F00183 Simpson AH, Lamb S, Roberts PJ et al:Does the type of flooring affect the risk of hip fracture? Age Ageing 2004;33:242-246



 

 
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