(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第3章 大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子
3.1.骨に関連した危険因子
3.1.骨に関連した危険因子
■ Clinical Question 6
危険因子となる既往症・疾病・家族歴
解説
【Grade B】
親の大腿骨頚部/転子部骨折の既往は危険因子である.
【Grade B】
甲状腺機能亢進症,性腺機能低下症,胃切除術の既往は危険因子である.
【Grade C】
糖尿病,腎機能低下は危険因子である.
【Grade C】
膝痛は危険因子である.
【Grade C】
視力障害は危険因子である.
サイエンティフィックステートメント
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親の大腿骨頚部/転子部骨折歴は独立した危険因子であり,リスクが約1.5〜2倍になる(EV level R-I). |
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甲状腺機能亢進症の既往,胃手術歴,性腺機能低下症などの続発性骨粗鬆症に関係する疾患の合併は大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子である(EV level R-I, EV level R-III). |
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糖尿病の合併は大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子である(EV level R-II). |
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eGFR(推算糸球体濾過量)の低下は大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子である(EV level R-III). |
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クレアチニンクリアランスの低下は大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子である(EV level R-IV). |
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膝痛は大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子である(EV level R-II). |
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視力障害は大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子である(EV level R-II). |
エビデンス
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西オーストラリアにおける大腿骨近位部骨折患者の調査では,血清25(OH)D副甲状腺ホルモンの測定により,ビタミンD不足は32%,副甲状腺機能亢進は18%.ビタミンD不足は機能障害と関連があり,家にこもりがちの高齢者に多かった((F1F01709, EV level R-VI). |
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男女のいくつかのcase-control studyは,甲状腺機能亢進症既往,胃手術,性腺機能低下症などの続発性骨粗鬆症に関係する疾患合併は,大腿骨近位部骨折リスクを増大させることを示している.さらに両親の大腿骨近位部骨折歴は独立した危険因子で,骨密度にかかわらず,リスクは約2倍になる(F1F00274, EV level R-I). |
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大腿骨近位部骨折の閉経後女性を対照群と比較した結果,大腿骨近位部骨折群での甲状腺機能亢進症のオッズ比は2.5で,甲状腺機能亢進症は大腿骨近位部骨折の重要な危険因子であると考えられた(F1F03737, EV level R-III). |
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3,050例の65歳以上のメキシコ系米国人を対象としたコホート研究によると,試験開始時に,690例が糖尿病と診断された.134例は,追跡調査の間,初めての大腿骨近位部骨折を経験した.COX比例ハザード分析で,年齢,BMI,喫煙と以前の脳卒中を調整したとき,糖尿病以外の患者と比較して,糖尿病患者では大腿骨近位部骨折のハザード比は1.57であった.インスリン使用患者ではハザード比は2.84であった(F2F02366, EV level R-II). |
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65歳以上の女性を対象としたコホート研究であるthe Study of Osteoporotic Fractures内の症例・対照研究で,年齢,体重,踵骨骨密度で調整したeGFRは骨折のリスクと関連していた.eGFRが60(mL/分/1.73m2)以上と比較すると,大腿骨近位部骨折のハザード比は,eGFRが45〜59では1.57(95%CI 0.89〜2.76)で,eGFRが45未満では2.32(95%CI 1.15〜4.68)であった.特に転子部骨折でのハザード比は,eGFR が45〜59では3.93(95%CI 1.37〜11.30)で,eGFRが45未満では7.17(95%CI 1.93〜26.67)であった(F2F00537, EV level R-III). |
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骨粗鬆症治療を受けている65歳以上のドイツ人の60.9%にクレアチニンクリアランスの低下(65mL/分未満)を認めた.クレアチニンクリアランスの低下(65mL/分未満)は,大腿骨近位部骨折と有意な関連(OR 1.57,95%CI 1.18〜2.09)を認めた(F2F03231, EV level R-VI). |
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meta-analysisで,大腿骨近位部骨折に対する親の(すべての)骨折歴の相対危険は1.49(95%CI 1.17〜1.89)であった.大腿骨近位部骨折に対する親の骨折歴の相対危険は,男性(2.02)では女性(1.38)よりやや高かったがその差は有意ではなかった.大腿骨近位部骨折に対する親の大腿骨近位部骨折歴の相対危険は2.27(95%CI 1.47〜3.49)と有意であった.親の(すべての)骨折歴はBMDと独立して大腿骨近位部骨折発生と有意に関連していた(F2F00731, EV level R-I). |
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膝痛の大腿骨近位部骨折に対するハザード比は2.00(95%CI 1.18〜3.37)と有意であった.これは転倒で調整しても1.75(95%CI 1.03〜2.99)と有意であったが,歩行補助具で調整すると有意ではなくなった(F2F00641, EV level R-II). |
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49歳以上の3,654例の地域住民を対象とした2年間のコホート研究で,視力障害は 大腿骨近位部骨折の危険因子であることがわかった(F2F01754, EV level R-II). |
文献